成瀬課長はヒミツにしたい【改稿版】
すれ違う想い
「柊馬。ちょっといいか?」
明彦は社長室の隣に面した部屋の扉に手をかけると、成瀬を振り返る。
「あぁ」
成瀬の低い声が聞こえ、二人は隣のミーティングルームに入った。
社長室の隣のミーティングルームはガラス張りで、外からも中の様子が伺えるようになっている。
それでも二人が何を話しているのかは、真理子にはわからないだろう。
明彦は中から、真理子がパソコン画面に集中しているのを確認すると、成瀬に目線を戻す。
「今回の件、柊馬はどう思う?」
成瀬は唸るように腕を組んだ。
「今の段階ではまだ何とも言えない。ただ、仮に書き込み内容が事実として、顧客情報が漏れたとしたら一大事だ。売上だけじゃない、今後の会社の信用問題に大きく関わる」
「だよね……。最悪の事態を想定しておいた方が、良いかも知れないってことか」
明彦はため息をつきながら、ぐっと目頭を押さえた。
「ただ、個人情報のデータを扱う部署は限られている。さっきの真理子の話だと、ミスであればすぐに判明するだろう。問題は……悪意がある場合だな。かなり大事になる可能性がある。下手したら……」
成瀬は厳しい声を出すと、明彦の顔をチラッと見る。
「下手したら、俺のクビが飛ぶってことか」
明彦は笑いながら自分の首を切る真似をした。
「おい! ふざけてる場合じゃないぞ。むしろ、ここにいる全員のクビが飛ぶ。正直、新聞社への書き込みも含めると、単なるミスで起こりうる出来事じゃない」
成瀬は机を両手でバンっと叩いた。
「悪意あり……か」
明彦は独り言のようにつぶやく。
「とりあえず今は、真理子がどこまで調べられるかにかかってる」
しばらくして、成瀬が低い声を出した。
「真理子ちゃんには、負担をかけちゃうな。しばらくは、家政婦業もストップだね」
明彦は椅子に寄り掛かるように腰かけると、ぼんやりと真理子の方を振り返る。
「乃菜はどうするんだ? あいつ、俺には『しばらく家政婦に来るな』って言ってたし」
成瀬は椅子に深く腰かけると、ふてくされたような顔を見せた。
あはは、という明彦の笑い声が、ミーティングルームに響く。
「柊馬はライバルだからね」
「ライバル?」
怪訝な顔をする成瀬を見て、再び明彦の明るい笑い声が響いた。
「ほんっと、柊馬の鈍感力には感謝するよ……。乃菜の事は、秘書課にお願いするしかないかなぁ。前に協力してくれるって言ってたし」
「そんな事して、大丈夫なのか?」
明るい笑顔を見せる明彦に、成瀬は大きくため息をつく。
「まあ、大丈夫でしょ。それにしても、せっかく一歩進めそうだったのになぁ。ここでお預けかぁ……」
そう言いながら大きく伸びをする明彦の顔を、成瀬が不思議そうに見つめている。
明彦は社長室の隣に面した部屋の扉に手をかけると、成瀬を振り返る。
「あぁ」
成瀬の低い声が聞こえ、二人は隣のミーティングルームに入った。
社長室の隣のミーティングルームはガラス張りで、外からも中の様子が伺えるようになっている。
それでも二人が何を話しているのかは、真理子にはわからないだろう。
明彦は中から、真理子がパソコン画面に集中しているのを確認すると、成瀬に目線を戻す。
「今回の件、柊馬はどう思う?」
成瀬は唸るように腕を組んだ。
「今の段階ではまだ何とも言えない。ただ、仮に書き込み内容が事実として、顧客情報が漏れたとしたら一大事だ。売上だけじゃない、今後の会社の信用問題に大きく関わる」
「だよね……。最悪の事態を想定しておいた方が、良いかも知れないってことか」
明彦はため息をつきながら、ぐっと目頭を押さえた。
「ただ、個人情報のデータを扱う部署は限られている。さっきの真理子の話だと、ミスであればすぐに判明するだろう。問題は……悪意がある場合だな。かなり大事になる可能性がある。下手したら……」
成瀬は厳しい声を出すと、明彦の顔をチラッと見る。
「下手したら、俺のクビが飛ぶってことか」
明彦は笑いながら自分の首を切る真似をした。
「おい! ふざけてる場合じゃないぞ。むしろ、ここにいる全員のクビが飛ぶ。正直、新聞社への書き込みも含めると、単なるミスで起こりうる出来事じゃない」
成瀬は机を両手でバンっと叩いた。
「悪意あり……か」
明彦は独り言のようにつぶやく。
「とりあえず今は、真理子がどこまで調べられるかにかかってる」
しばらくして、成瀬が低い声を出した。
「真理子ちゃんには、負担をかけちゃうな。しばらくは、家政婦業もストップだね」
明彦は椅子に寄り掛かるように腰かけると、ぼんやりと真理子の方を振り返る。
「乃菜はどうするんだ? あいつ、俺には『しばらく家政婦に来るな』って言ってたし」
成瀬は椅子に深く腰かけると、ふてくされたような顔を見せた。
あはは、という明彦の笑い声が、ミーティングルームに響く。
「柊馬はライバルだからね」
「ライバル?」
怪訝な顔をする成瀬を見て、再び明彦の明るい笑い声が響いた。
「ほんっと、柊馬の鈍感力には感謝するよ……。乃菜の事は、秘書課にお願いするしかないかなぁ。前に協力してくれるって言ってたし」
「そんな事して、大丈夫なのか?」
明るい笑顔を見せる明彦に、成瀬は大きくため息をつく。
「まあ、大丈夫でしょ。それにしても、せっかく一歩進めそうだったのになぁ。ここでお預けかぁ……」
そう言いながら大きく伸びをする明彦の顔を、成瀬が不思議そうに見つめている。