成瀬課長はヒミツにしたい【改稿版】
見つけた証拠
成瀬について足早に駅まで行くと、そのまま来た電車に飛び乗った。
いくつか路線を変え、ローカル線に乗り換える。
たどり着いた駅は、だだっ広い田園風景の広がるのどかな街だった。
真理子は初めて降り立った味わいのある駅舎を振り返ると、口をあんぐりと開けて見とれてしまう。
「おい! こっちだ」
すると耳元で成瀬の声が聞こえ、ビクッと背筋を正した。
成瀬は何度も来たことがあるのか、慣れた様子でタクシー乗り場に向かう。
そこからタクシーに揺られること20分。
奥に広い敷地が見える門の前で、車を降りた。
何台もの車が並んでいる駐車場を抜け、大きな鉄の扉の前に立つと、奥から機械の音が鳴り響いている。
「ここって……」
真理子は次第に高鳴っていく胸をぎゅっと押さえ、中を覗き込んだ。
作業着姿の人たちが行き来するこの工場は、サワイライトの自社工場だった。
「まぁ! 成瀬さんじゃない」
明るい声が聞こえ振り返ると、作業着を着た60代くらいの人の好さそうな女性が笑顔を向けていた。
「どうも、田中さん。調子はどうですか?」
田中と呼ばれた女性は、丸い顔をさらに真ん丸にして、にこやかにほほ笑む。
成瀬も本社にいる時では考えられない程、柔らかな顔を向けていた。
「まぁ、ぼちぼちよ。そうそう、うちに孫がうまれてねぇ。ちょっと写真見ておくれよ」
田中さんは、きゃぴきゃぴとはしゃぐように明るい声を出すと、携帯を取り出す。
老眼鏡をかけながらガラケーを操作する田中さんと、それを覗き込む成瀬。
いつの間にか二人の周りには、従業員がわらわらと集まっていた。
――みんな、柊馬さんの事をよく知っているみたい……。
真理子が呆気に取られていると、向かいから歩いてくる男性の姿が映る。
「あ! 工場長だ」
誰かの小さな声が聞こえ、みんな慌てるようにバラバラと持ち場に戻って行った。
すると、田中さんと同じくらいの年代の、小柄な白髪の男性が成瀬に会釈をした。
「成瀬さん。わざわざこんな遠くまで。大変だったでしょう?」
工場長も、やはり人の好さそうな優しい笑みを浮かべている。
「いえ、こちらこそ急にすみません。それで、早速なんですが……」
成瀬が声をひそめると、工場長は小さくうなずく。
「パソコンですね。こちらです……」
真理子は成瀬の後に続き、工場の中へと入って行った。
入り口近くのスペースでは、さっきの田中さんが作業の手を動かしている。
手に持っているのは、ステッキ型の電飾玩具だ。
スイッチを押すと、ステッキの先のハート型になった部分が色とりどりに光り出す。
田中さんは一点一点手作業で、ライトの点灯の最終確認をしているようだった。
「わぁ。いっぱいある」
真理子は思わず、心が躍るような気分になり、つい声を上げる。
いくつか路線を変え、ローカル線に乗り換える。
たどり着いた駅は、だだっ広い田園風景の広がるのどかな街だった。
真理子は初めて降り立った味わいのある駅舎を振り返ると、口をあんぐりと開けて見とれてしまう。
「おい! こっちだ」
すると耳元で成瀬の声が聞こえ、ビクッと背筋を正した。
成瀬は何度も来たことがあるのか、慣れた様子でタクシー乗り場に向かう。
そこからタクシーに揺られること20分。
奥に広い敷地が見える門の前で、車を降りた。
何台もの車が並んでいる駐車場を抜け、大きな鉄の扉の前に立つと、奥から機械の音が鳴り響いている。
「ここって……」
真理子は次第に高鳴っていく胸をぎゅっと押さえ、中を覗き込んだ。
作業着姿の人たちが行き来するこの工場は、サワイライトの自社工場だった。
「まぁ! 成瀬さんじゃない」
明るい声が聞こえ振り返ると、作業着を着た60代くらいの人の好さそうな女性が笑顔を向けていた。
「どうも、田中さん。調子はどうですか?」
田中と呼ばれた女性は、丸い顔をさらに真ん丸にして、にこやかにほほ笑む。
成瀬も本社にいる時では考えられない程、柔らかな顔を向けていた。
「まぁ、ぼちぼちよ。そうそう、うちに孫がうまれてねぇ。ちょっと写真見ておくれよ」
田中さんは、きゃぴきゃぴとはしゃぐように明るい声を出すと、携帯を取り出す。
老眼鏡をかけながらガラケーを操作する田中さんと、それを覗き込む成瀬。
いつの間にか二人の周りには、従業員がわらわらと集まっていた。
――みんな、柊馬さんの事をよく知っているみたい……。
真理子が呆気に取られていると、向かいから歩いてくる男性の姿が映る。
「あ! 工場長だ」
誰かの小さな声が聞こえ、みんな慌てるようにバラバラと持ち場に戻って行った。
すると、田中さんと同じくらいの年代の、小柄な白髪の男性が成瀬に会釈をした。
「成瀬さん。わざわざこんな遠くまで。大変だったでしょう?」
工場長も、やはり人の好さそうな優しい笑みを浮かべている。
「いえ、こちらこそ急にすみません。それで、早速なんですが……」
成瀬が声をひそめると、工場長は小さくうなずく。
「パソコンですね。こちらです……」
真理子は成瀬の後に続き、工場の中へと入って行った。
入り口近くのスペースでは、さっきの田中さんが作業の手を動かしている。
手に持っているのは、ステッキ型の電飾玩具だ。
スイッチを押すと、ステッキの先のハート型になった部分が色とりどりに光り出す。
田中さんは一点一点手作業で、ライトの点灯の最終確認をしているようだった。
「わぁ。いっぱいある」
真理子は思わず、心が躍るような気分になり、つい声を上げる。