成瀬課長はヒミツにしたい【改稿版】
社長の予想外の発言に、会場内のざわつきは一向に収まらない。
専務は、隣で固まっている橋本を振り返った。
「橋本! どういう事だ!」
橋本は狼狽しながら、何度も首を横に振る。
「わ、私にも、何がなんだか……。ただ……」
「ただ!?」
「さっき、名簿業者から物凄い剣幕で連絡が入って……。『イカサマのデータを渡しやがって、金を返すまで許さないぞ』って……凄まれて」
橋本はよほど怖い思いをしたのか、話しながら涙目になっている。
「なに!?」
専務は大きな声を出すと、はっとして正面を向く。
会場の一番前では、社長が鋭い視線を専務に向けていた。
「ま、まさか……」
専務は、わなわなと唇を震えさせる。
「どういう事か、ご説明ください」
「つまり、掲示板に書き込まれた内容は、デマだったという事ですか?」
ざわつく会場では、マスコミの人々から矢継ぎ早に質問がされる。
社長は軽くうなずくと、静かにマイクを手に取った。
「はい。弊社の顧客情報が外部に漏洩した、という事実はありませんでした。その点においては、顧客の皆様には安心していただきたいと思います。ただ……」
社長は一旦言葉を切ると、会場の一番後ろでたじろぐ専務と橋本を鋭く見据える。
「大変残念なことに、弊社において、情報漏洩騒ぎを起こそうとした人物がいたことは事実です。こちらに関しては、しかるべき監督省庁へ報告を行ったのち、厳正に対処させて頂きます」
社長の語尾に力がこもる。
「つまり、事件を未然に防いだという事ですね?」
「はい」
力強くうなずく社長の姿を前に、専務はその場で立ち尽くしていた。
すると会場内の一人が社長の目線に気がつき、ばっと後ろを振り向く。
「もしかして、あいつらか?」
その声に、一斉に他の人々も振り返った。
会場内の人々から視線を投げかけられ、専務と橋本は思わず壁際に後ずさる。
「とりあえず撮っとけ!」
誰かが叫び、一斉にシャッター音が鳴り響いた。
専務と橋本は、突如として眩いばかりのフラッシュに包まれる。
「わ、私じゃない! 話を持ってきて、たぶらかしたのはコイツだ……」
専務は顔を隠すように大きく両手を振りながら叫ぶと、茫然自失して動けなくなっている橋本を残して、会場を後にしようとした。
「おい、逃げるぞ!」
小さい叫び声が聞こえ、一斉に立ち上がる音がする。
すると、慌てて取っ手に手をかけようとした専務の前で、ゆっくりと扉が開いた。
「おやおや、専務。どこへ行かれるのですか?」
入り口に立ちはだかり、冷たい目で見下ろしているのは成瀬だった。
「き、貴様……」
専務は口元をわなわなと震わせながら、うめくような声を上げる。
「専務。話は別室で、ゆっくりと聞かせてもらいましょう」
成瀬の後ろから、常務が厳しい声で淡々と告げた。
「サワイの未来を、楽しみにしてやる……」
専務はそう吐き捨てると、首をうなだれた橋本と共に外へと連れ出された。
専務は、隣で固まっている橋本を振り返った。
「橋本! どういう事だ!」
橋本は狼狽しながら、何度も首を横に振る。
「わ、私にも、何がなんだか……。ただ……」
「ただ!?」
「さっき、名簿業者から物凄い剣幕で連絡が入って……。『イカサマのデータを渡しやがって、金を返すまで許さないぞ』って……凄まれて」
橋本はよほど怖い思いをしたのか、話しながら涙目になっている。
「なに!?」
専務は大きな声を出すと、はっとして正面を向く。
会場の一番前では、社長が鋭い視線を専務に向けていた。
「ま、まさか……」
専務は、わなわなと唇を震えさせる。
「どういう事か、ご説明ください」
「つまり、掲示板に書き込まれた内容は、デマだったという事ですか?」
ざわつく会場では、マスコミの人々から矢継ぎ早に質問がされる。
社長は軽くうなずくと、静かにマイクを手に取った。
「はい。弊社の顧客情報が外部に漏洩した、という事実はありませんでした。その点においては、顧客の皆様には安心していただきたいと思います。ただ……」
社長は一旦言葉を切ると、会場の一番後ろでたじろぐ専務と橋本を鋭く見据える。
「大変残念なことに、弊社において、情報漏洩騒ぎを起こそうとした人物がいたことは事実です。こちらに関しては、しかるべき監督省庁へ報告を行ったのち、厳正に対処させて頂きます」
社長の語尾に力がこもる。
「つまり、事件を未然に防いだという事ですね?」
「はい」
力強くうなずく社長の姿を前に、専務はその場で立ち尽くしていた。
すると会場内の一人が社長の目線に気がつき、ばっと後ろを振り向く。
「もしかして、あいつらか?」
その声に、一斉に他の人々も振り返った。
会場内の人々から視線を投げかけられ、専務と橋本は思わず壁際に後ずさる。
「とりあえず撮っとけ!」
誰かが叫び、一斉にシャッター音が鳴り響いた。
専務と橋本は、突如として眩いばかりのフラッシュに包まれる。
「わ、私じゃない! 話を持ってきて、たぶらかしたのはコイツだ……」
専務は顔を隠すように大きく両手を振りながら叫ぶと、茫然自失して動けなくなっている橋本を残して、会場を後にしようとした。
「おい、逃げるぞ!」
小さい叫び声が聞こえ、一斉に立ち上がる音がする。
すると、慌てて取っ手に手をかけようとした専務の前で、ゆっくりと扉が開いた。
「おやおや、専務。どこへ行かれるのですか?」
入り口に立ちはだかり、冷たい目で見下ろしているのは成瀬だった。
「き、貴様……」
専務は口元をわなわなと震わせながら、うめくような声を上げる。
「専務。話は別室で、ゆっくりと聞かせてもらいましょう」
成瀬の後ろから、常務が厳しい声で淡々と告げた。
「サワイの未来を、楽しみにしてやる……」
専務はそう吐き捨てると、首をうなだれた橋本と共に外へと連れ出された。