成瀬課長はヒミツにしたい【改稿版】
「でも、あまりに業務内容が違いすぎて……。それにシステム部は、部長一人になってしまいます」
真理子は戸惑いを隠せないまま、胸の前で手を握った。
「システム部の事は心配しなくていい。部長も納得の上だ」
「そんな……」
「今後は秘書と家政婦として、明彦と乃菜の事を一番近くで、支えてやってくれないか? これは、真理子にしかできないことなんだ」
成瀬はそう言うと、真理子の肩にそっと手を置いた。
真理子はその手の平から伝わる熱を感じながら、上目づかいで成瀬を見つめる。
「それは……柊馬さんも一緒に、ってことですよね……?」
たどたどしく声を出す真理子に、成瀬の手がピクリと動いた。
「いや、それは……」
成瀬は真理子から手を離すと、窓辺に視線を逸らす。
その様子を見ながら、真理子の脳裏に、以前工場で田中さんと話した会話が浮かんだ。
――夢を叶えてくれる魔法のステッキ……。もう少し、頑張ってもいいの……?
真理子は顔を上げると、勇気を出して成瀬の腕をぎゅっと握った。
「家政婦を続けることはできます。柊馬さんがそう言うなら、秘書にもなります。でもそれは、柊馬さんが第一家政婦として二人を支えるのが前提で、私はただ……」
成瀬が思わず真理子を振り返った。
「ただ……?」
「私はただ……柊馬さんのパートナーでいたいだけなんです!」
真理子は全身で言葉を発するように、両手にぐっと力を入れる。
真理子の耳に、成瀬の息を吸う音が小さく聞こえた。
見つめ合う二人の間には、長い沈黙が流れる。
「明彦には……お前が必要なんだ」
しばらくして、成瀬が目を逸らすように、そうつぶやいた。
真理子は成瀬の腕を、ぐっと自分の方へ引く。
「社長の気持ちは、すごく嬉しいです。でも……」
真理子は一旦ぎゅっと目を閉じる。
そして、大きく息を吸ってから、ゆっくりと目を開いた。
「でも……私が本当に好きなのは、と……」
真理子がそこまで言った時、成瀬が真理子の首元に手を回す。
そして自分の胸に、真理子の頭をぐっと押し付けた。
真理子は、一瞬何が起こったのかわからず呆然とする。
成瀬はそのまま真理子の耳元に、自分の顔をうずめた。
「柊馬……さん……?」
真理子の身体に、成瀬の鼓動の音が響いている。
しばらくして、放心状態の真理子の耳元で、成瀬が小さく息を吸った。
「ごめん、真理子」
「え……?」
「俺は、お前の気持ちには……答えられない」
その言葉を聞いた途端、真理子の全身から何かがガラガラと崩れていく。
呼吸も忘れ立ち尽くす真理子から手を離すと、成瀬はまるで自分の心に蓋をするかのように、眼鏡をかけて会議室を後にした。
それからしばらくして、真理子の人事異動が発表になった。
真理子は戸惑いを隠せないまま、胸の前で手を握った。
「システム部の事は心配しなくていい。部長も納得の上だ」
「そんな……」
「今後は秘書と家政婦として、明彦と乃菜の事を一番近くで、支えてやってくれないか? これは、真理子にしかできないことなんだ」
成瀬はそう言うと、真理子の肩にそっと手を置いた。
真理子はその手の平から伝わる熱を感じながら、上目づかいで成瀬を見つめる。
「それは……柊馬さんも一緒に、ってことですよね……?」
たどたどしく声を出す真理子に、成瀬の手がピクリと動いた。
「いや、それは……」
成瀬は真理子から手を離すと、窓辺に視線を逸らす。
その様子を見ながら、真理子の脳裏に、以前工場で田中さんと話した会話が浮かんだ。
――夢を叶えてくれる魔法のステッキ……。もう少し、頑張ってもいいの……?
真理子は顔を上げると、勇気を出して成瀬の腕をぎゅっと握った。
「家政婦を続けることはできます。柊馬さんがそう言うなら、秘書にもなります。でもそれは、柊馬さんが第一家政婦として二人を支えるのが前提で、私はただ……」
成瀬が思わず真理子を振り返った。
「ただ……?」
「私はただ……柊馬さんのパートナーでいたいだけなんです!」
真理子は全身で言葉を発するように、両手にぐっと力を入れる。
真理子の耳に、成瀬の息を吸う音が小さく聞こえた。
見つめ合う二人の間には、長い沈黙が流れる。
「明彦には……お前が必要なんだ」
しばらくして、成瀬が目を逸らすように、そうつぶやいた。
真理子は成瀬の腕を、ぐっと自分の方へ引く。
「社長の気持ちは、すごく嬉しいです。でも……」
真理子は一旦ぎゅっと目を閉じる。
そして、大きく息を吸ってから、ゆっくりと目を開いた。
「でも……私が本当に好きなのは、と……」
真理子がそこまで言った時、成瀬が真理子の首元に手を回す。
そして自分の胸に、真理子の頭をぐっと押し付けた。
真理子は、一瞬何が起こったのかわからず呆然とする。
成瀬はそのまま真理子の耳元に、自分の顔をうずめた。
「柊馬……さん……?」
真理子の身体に、成瀬の鼓動の音が響いている。
しばらくして、放心状態の真理子の耳元で、成瀬が小さく息を吸った。
「ごめん、真理子」
「え……?」
「俺は、お前の気持ちには……答えられない」
その言葉を聞いた途端、真理子の全身から何かがガラガラと崩れていく。
呼吸も忘れ立ち尽くす真理子から手を離すと、成瀬はまるで自分の心に蓋をするかのように、眼鏡をかけて会議室を後にした。
それからしばらくして、真理子の人事異動が発表になった。