惚れさせゲーム
恋の方程式、解けますか?
〇 教室(1時間目・数学の授業前)

朝の騒ぎが一段落したものの、紗菜の気持ちはまったく落ち着いていなかった。
翼の「お前を惚れさせる宣言」以来、どうにも彼のペースに巻き込まれっぱなしだ。

紗菜(モノローグ)
「……なんで私がこんな目に……」

そんなことを考えていると、隣の席の翼がニヤリと笑い、肘で軽く突いてきた。

翼「なあ、紗菜。ちょっと勝負しない?」

紗菜「は? 何の?」

嫌な予感しかしない。紗菜が警戒すると、翼は得意げに言った。

翼「今日の数学の授業、どっちが先に先生の問題を解けるか。先に正解した方が勝ち。負けたら……そうだな。勝った方の言うことをひとつ聞くってのはどう?」

翼の言葉に、周囲のクラスメイトたちがざわっと反応する。

「うわ、始まったよ!」
「三峰さんと桃瀬くんの勝負? 絶対おもしろいやつじゃん!」
「これで三峰さんが負けたら……まさか告白させられるとか!?」

一気に盛り上がる教室。だが、紗菜は冷静だった。

紗菜「……いいわよ。その勝負、受けてあげる」

翼は楽しそうに笑った。

翼「よし、そうこなくっちゃ!」

紗菜(モノローグ)
「まあ、どうせ勝つのは私だけどね」

紗菜はすでに数学の予習を済ませていたし、こんな挑戦、負けるはずがない――そう思っていた。

---

〇 数学の授業中

先生「では、この問題を解いてみろ」

先生が黒板に書いたのは、難関大学レベルの関数の問題だった。
クラス中がざわめく中、紗菜はすぐにペンを走らせる。

紗菜(モノローグ)
(……この問題なら、微分を使えばすぐに解ける)

紗菜は素早く計算を進め、確信する。あと数秒で答えが出る――。
ところが――

翼「先生! これ答えです!」

隣の席から翼が手を挙げる。
そのノートを見ると、紗菜が書いたのと同じ答えが……。

紗菜(モノローグ)
「え……!? なんでこんなに早いの!?」

驚く紗菜に、翼はニヤリと笑ってウインクした。

翼「俺の勝ち、だな?」

紗菜は言葉を失った。

紗菜(モノローグ)
「まさか、私が負けるなんて――!?」

クラス中がどよめき、桃羽も驚いた表情で紗菜を見ていた。
翼はゆっくりと紗菜に顔を近づけ、小声で囁く。

翼「さて、俺のお願い、ちゃんと聞いてもらうからな?」

その瞬間、紗菜は背筋が凍る思いがした――。
< 14 / 45 >

この作品をシェア

pagetop