無口な彼の内情を知ったら、溺愛されるようになりました……!?

「中村さん」

 二十代後半から三十代前半くらいの女の人が立っていた。

「村崎様にご案内できるよう、用意が整いました」

 要件を伝えると、凛とした表情で立っている中村さん。やはり、事務的なものだよね。

「ありがとうございます。案内は俺がしますから、そのーー」

「? 施設の案内は、私が致しますよ?」
(村崎様の力がないと、この施設はいつまでも営業できない。坊ちゃんが、デートする場所を悩んでいたのを利用したのは申し訳ないわ。でも、私は緑谷家の使用人。私の主人は、坊ちゃんではなくお父上。許してくださいね)

 心の中で緑谷くんを騙した中村さんの意図が分かった。
 緑谷くんはーーやっぱり、私とデートしようと考えてくれていたんだ。

「いえ、俺も施設のことは分かってますし。あの、中村さんには後日ーー村崎の所の使用人さんやご両親に案内をお願いしても良いですか?」

「えっ。坊ちゃん、いつの間に村崎様のご両親をこの施設へ招待する関係になったのですか?」

 予想外な言葉に目を丸くする中村さん。
 私もびっくりした。畠山さんとすぐ仲良くなってたのは見てたけど、パパやママとも仲良くなっていたなんて。
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