無口な彼の内情を知ったら、溺愛されるようになりました……!?


「……来てたのか」

 ドアの方を見ると、そこにいたのは緑谷くん。私を見るなり、ボソッと低い声で言った。小さい声だけど、私しかいなかった教室はシンとしており、その言葉は聞こえた。

 えっ、来てたのかって言った……!?
 そりゃあ、来るよ? 今日、学校がある日だもん……!
 それに、一昨日ーー「また、学校で」って言ったよね!? そんなに私に会いたくないの……? 一体、私の何が、彼をそこまで不快にするんだろう。

「あ、えと……お、おはよう」

「……おはよう」

「早いね。今日、空手部の朝練は休みだったの?」

 一昨日のリベンジ。そう思って話しかけてみたけれど……。

「……」

 えっ、む……無視っ!?
 私、そこまでーー。

「村崎」

「……? な、なに?」

 さっきの返事を考えてくれたのかと思ったが、彼の言葉は意外なものだった。

「今日はもう帰れ」

 とても冷たい顔で、私が学校へ行くという権利を侵害された。さすがに、これは聞き逃すことができなかった。

 考えるよりも先に、立ち上がったらーー勢い当たったのか、ふらっとした。

「あ、あれ……」

 視界がぐるりと一転し、床に寝転がってしまった。
 体に力が入らなくて、立ち上がれない。床が冷たくて気持ち良い。

 私ーーどうしちゃったのかな。

「村崎っ! 村崎……!」

 緑谷くんの声が、どんどん遠くなった。
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