悪女だってヒロインになりたいんです。
追い討ちをかけるかのように美亜が意気揚々と、表面だけ切り取った情報を棗に伝えていた。

きっと私が今から何かを言ったって、意味がない。またこのパターンだ。

私の本当の気持ちなんていつも誰にも伝わらない。


「…別に、仲良いとか悪いとかどうでもいいんだけど」

「「…え?」」


思わず美亜と声が重なる。


「くだらないことばっか話してないで、手動かしたら?おまえも、早く行くぞ」

「ま、待って!おんぶで思い出したんだけど、私、小さい頃に風邪を拗らせて入院してたことがあるの。その時にある男の子と出会ったんだけど、その男の子がずっと棗くんにどこか似てる気がして…。覚えてない?私のことおんぶして病室まで運んでくれたよね」


私の腕を引っ張って行こうとしていた棗が、ハッとしたように美亜を振り向いた。

…いや、待って。今、なんて言った…?


「…病室でずっと泣いてた?」

「そう。一人でずっと入院してるのが寂しくて毎日泣いちゃってたの。恥ずかしいな、覚えてくれてるなんて」

「棗が病院で出会った女の子って、美亜ちゃんだったんだ。こいつ、昔からその女の子をずっと探してたんだよ。初恋の女の子だったからって」

「…やめろ、兄貴」
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