悪女だってヒロインになりたいんです。
棗がほんのり耳を赤くしていた。

棗にとってあの思い出は大切なものであったことがすごく嬉しかった。

それなのに…。


「私もあの男の子が初恋で…。ずっと会いたいと思ってたの。だから、また再会できて嬉しい」


にこっと天使のように微笑む美亜が、私には悪魔にしか見えなかった。

どうしてそんな嘘をつくの…?

美亜が幼い頃に入院していたなんて話は聞いたことがない。

どうして、どうして…。


耐えられなくなり、三人に背を向けて走り去る。

忘れていたけど、あの思い出は私にとっても大切な記憶だったのに。

できることならあの男の子ともう一度会いたいと願っていたのに…。


「茉莉花、どこ行くの?一人で歩いてたらまた迷子になるでしょ?」


洗い場の裏の物置前までやってきたところで、後ろから追いかけてきた美亜にぐいっと腕を引かれた。


「美亜…。なんで!なんであんな嘘ついたの?」
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