悪女だってヒロインになりたいんです。
棗はそっと手を伸ばしてくると、袖で涙を拭ってくれた。


「また卑怯な手使って脅されたんだろ?でも言い返せるようになったなんて、強くなったじゃん」

「…え?」


ゆっくりと起き上がった棗は涙を拭い終わると頬に手を当ててきた。


「てっきり、もう軽蔑されて嫌われたのかと思った…」

「はあ?なんでだよ。きっと茉莉花も茉莉花なりに考えてることがあると思って話を合わせたんだよ。あいつと行きたくもないのに二人でお化け屋敷に入ったりしてな。そしたらやっぱり茉莉花はちゃんと自分の気持ちを伝えられたじゃん。もうただの言いなりになってる茉莉花じゃないし悪女でもない。強いヒロインだ」


棗は最初から私のことを信じてくれていたんだ。


「私は棗が過去の話をしてくれた時、何もできなかった。それなのに棗はずるいよ…。私の苦しかった心を一瞬で救い出してくれるんだから。信じてくれたのが棗でよかった…っ」

「何もしなくていい。そばにいてくれるだけでいいから」


すっかり涙腺が崩壊して再び泣き出す私を棗がそっと抱き寄せてくれた。

ねえ棗…。こんなの勘違いしちゃうよ。


「…好き」
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