悪女だってヒロインになりたいんです。
–––「おまえみたいな悪女、誰も好きにならねぇよ」


「茉莉花のことが好きだ。俺と、付き合ってください」


ずっと願っていた。

私も悪女なんかじゃなくて誰かの、棗のヒロインになりたいと。


「私が棗のヒロインになってもいいの…?」


棗はきょとんと目を丸くしてから、ふっと優しく吹き出した。


「ずっと前から俺のヒロインは茉莉花だけだ」


じわりと滲む視界の中、優しく愛おしそうに微笑んでいる棗がそっと顔を近づけてきて目を閉じる。


ヒロインになることを諦めなければ、どんな悪女だって大切な誰かのヒロインになることだってできる。

そう教えてくれたのは、紛れもなく目の前にいる棗だから。

だから私はこれからも君だけのヒロインとしてこの物語を綴っていくね。

(ヒーロー)の隣で、ずっと…。
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