眠り王子と夢中の恋。
「ふぅ……」
痛む頭を振ってなんとか気持ちを落ち着かせた。
「美夜、どうした、大丈夫なのか」
扉をノックする音が聞こえて咄嗟に上体を起こすと、兄が入ってきた。
「……頭痛。少し」
「そうか……無理はするなよ。学校にはもう連絡したから。俺は今日一限からだからもう出ないとだし……」
はっとして時計を見るともう8時数分前だった。
確か、一限は9時から始まると教えてもらった記憶がある。
家から兄が通う大学は電車に乗って1時間程なので、もう出ないといけない時間だ。
私のために遅刻ギリギリなんて、お節介にもほどがあるような。
「大丈夫……行って」
「うん、ありがとう」
立ち上がって部屋のドアの方へ歩いて行き、ふと振り返った。
「そうだ、午後は璃來と出かけるから昼ご飯は作っといた弁当食いなよ」
頷くと、今度こそ部屋を出ていった。