眠り王子と夢中の恋。



「あれさぁ、絶対夏期講習のだよね?」

「やだ、ウケるー!やっぱ塾行ってんのアイツ!?」

「あはははっ、ガリ勉すぎるっしょ!」



取り巻きの二人が大笑いする。
思わず振り返ると、他の男子三人も笑っていた。

私は『無の顔』を崩さないように耐えながら、横断歩道を足早に渡る。

あの格好は、夏休み前に言っていた海に行く途中だろう。


小春は、ショートの髪を明るい色に染めて全体をクルクルと巻いていた。

お腹を出した半袖の服に薄いカーディガンを着て下にはショートパンツを履き、遠目に見ても分かるほどの化粧もしていた。

私は今日も目立たない格好で、きっと塾の名前が書いてあるカバンを見なくても夏期講習だと分かるだろう。


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