眠り王子と夢中の恋。



「夢界とはいえ人が多いから。
はぐれないよう俺の手を掴んでおいて」

「え?あ、……ありがとうございます、です」

「美夜ってたまに面白い敬語になるな」



クスリ、と玲音が笑う。



「そういえばですけど、ここにいる人たちは?」

「無人の祭りなんて聞いたことがないから用意したんだ。安心しろ、現実に干渉はしてない」



ということは気を抜いても大丈夫ということだ。

話しながらゆっくりと進むと、
なぜかお腹がすいてきた。



「何か食べたいのですが……」

「俺も。ここでももちろん腹は減るからな」



屋台を見ていると、ある名前に目が止まった。



「……あれは、りんご飴の屋台?」



玲音が聞いてくる。

無性に、食べたことのないりんご飴に惹かれたのはなぜだろう。


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