猫は、その恋に奇跡を全振りしたい
*
家に着くころには、とっぷり日が暮れていた。
二階建ての決して広いとはいえない家には、わたしと両親が住んでいる。
お母さんはまだ、仕事なのだろう。
台所には、誰もいなかった。
冷蔵庫から取り出した紅茶をコップに注ぐ。
「んっー」
わたしは疲れを取るように、ソファーの上で伸びをした。
(猫を飼いたい。お母さん、どう思うかな……。やっぱり、反対するだろうな……)
両親に、猫を飼う話をするのは初めてだった。
猫嫌いのお母さんは、猫のことを快く思っていない。
もしかしたら、猛反対するかもしれない。
正直、これから進む未来は、不安と暗さが重い霧のように立ち込めている。
でも、わたしは決心したんだ。
ミルちゃんと再会したいから。
玄関の鍵が開く音が聞こえたので体を起こすと、すぐにお母さんがリビングに入ってきた。
「あら、帰っていたのね」
「おかえりなさい」
お母さんはソファーに座っているわたしの様子を見て、不思議そうに首をかしげる。
「リビングにいるなんて、めずらしいわね。いつもは部屋にいるのに」
「その、お母さんに話したいことがあって……」
バツが悪そうに言うと、お母さんは怪訝な顔をした。
「ご飯を作ってからでいい。冷凍食品やスーパーのお惣菜とかがメインだけどね」
お母さんは念押しするように、スーパーの袋を見せる。
「……うん」
「じゃあ、お皿を出してね」
そう付け足すと、お母さんはてきぱきと冷蔵庫に買ってきたものをしまう。
早速、火をかけると、お母さんはでっかいフライパンを手にした。
わたしが食器棚から皿を出している最中、レンジの音が響いた。
やがて、夕食がずらりと食卓に並ぶ。
「ごちそうさまでした」
夕食を淡々と終えた後、お母さんが改めて切り出した。
「で、話ってなに?」
お母さんの声が、先程より低くなったのは気のせいじゃない。
「重要なことなの?」
鋭く冷たい声に、わたしはビクッとする。
「その、お願いしたいことがあって……」
お母さんの剣幕に、わたしはそれだけを言うのがやっとだった。
家に着くころには、とっぷり日が暮れていた。
二階建ての決して広いとはいえない家には、わたしと両親が住んでいる。
お母さんはまだ、仕事なのだろう。
台所には、誰もいなかった。
冷蔵庫から取り出した紅茶をコップに注ぐ。
「んっー」
わたしは疲れを取るように、ソファーの上で伸びをした。
(猫を飼いたい。お母さん、どう思うかな……。やっぱり、反対するだろうな……)
両親に、猫を飼う話をするのは初めてだった。
猫嫌いのお母さんは、猫のことを快く思っていない。
もしかしたら、猛反対するかもしれない。
正直、これから進む未来は、不安と暗さが重い霧のように立ち込めている。
でも、わたしは決心したんだ。
ミルちゃんと再会したいから。
玄関の鍵が開く音が聞こえたので体を起こすと、すぐにお母さんがリビングに入ってきた。
「あら、帰っていたのね」
「おかえりなさい」
お母さんはソファーに座っているわたしの様子を見て、不思議そうに首をかしげる。
「リビングにいるなんて、めずらしいわね。いつもは部屋にいるのに」
「その、お母さんに話したいことがあって……」
バツが悪そうに言うと、お母さんは怪訝な顔をした。
「ご飯を作ってからでいい。冷凍食品やスーパーのお惣菜とかがメインだけどね」
お母さんは念押しするように、スーパーの袋を見せる。
「……うん」
「じゃあ、お皿を出してね」
そう付け足すと、お母さんはてきぱきと冷蔵庫に買ってきたものをしまう。
早速、火をかけると、お母さんはでっかいフライパンを手にした。
わたしが食器棚から皿を出している最中、レンジの音が響いた。
やがて、夕食がずらりと食卓に並ぶ。
「ごちそうさまでした」
夕食を淡々と終えた後、お母さんが改めて切り出した。
「で、話ってなに?」
お母さんの声が、先程より低くなったのは気のせいじゃない。
「重要なことなの?」
鋭く冷たい声に、わたしはビクッとする。
「その、お願いしたいことがあって……」
お母さんの剣幕に、わたしはそれだけを言うのがやっとだった。