逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
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帰りの新幹線の中、蓮さんの様子は、ほんの少しだけいつもと違っていた。
今朝のように沈んでいるわけではない。目もきちんと合うし、その瞳には、彼らしいまっすぐな芯がしっかりと宿っている。
けれどその奥には、何かを決断しようとしているような気配が漂っていた。
──私に、何か大切なことを話そうとしている?
問いかけたい気持ちを抑えて、私は理性を総動員して沈黙を選んだ。もし蓮さんが何かを伝えたいと思っているのなら、それは彼自身の意思で話してほしい。そう思ったからだ。
もしかすると、良くない話かもしれない。けれど、だからこそ──彼が「話したい」と思ったその時に、彼の言葉で聞きたかった。
「薫の故郷、楽しかったよ。リンゴもたくさんもらっちゃったね」
明日香ちゃんが別れ際に、家で採れたリンゴを袋いっぱいに持たせてくれたのだ。蜜のような甘い香りが、ビニール袋からふわりと立ちのぼる。
ふと思いついて、私は言った。
「せっかくだから、明日、会社で蓮さんの同僚に配ってあげて。私も、会社の友だちに持っていくね」
「ありがとう」
蓮さんが穏やかに頷く。
「ふじリンゴだから日持ちするけど、収穫したては格別に美味しいんだよ」
「そうなんだ」
蓮さんは、手の中のリンゴを見つめて静かに言った。
帰りの新幹線の中、蓮さんの様子は、ほんの少しだけいつもと違っていた。
今朝のように沈んでいるわけではない。目もきちんと合うし、その瞳には、彼らしいまっすぐな芯がしっかりと宿っている。
けれどその奥には、何かを決断しようとしているような気配が漂っていた。
──私に、何か大切なことを話そうとしている?
問いかけたい気持ちを抑えて、私は理性を総動員して沈黙を選んだ。もし蓮さんが何かを伝えたいと思っているのなら、それは彼自身の意思で話してほしい。そう思ったからだ。
もしかすると、良くない話かもしれない。けれど、だからこそ──彼が「話したい」と思ったその時に、彼の言葉で聞きたかった。
「薫の故郷、楽しかったよ。リンゴもたくさんもらっちゃったね」
明日香ちゃんが別れ際に、家で採れたリンゴを袋いっぱいに持たせてくれたのだ。蜜のような甘い香りが、ビニール袋からふわりと立ちのぼる。
ふと思いついて、私は言った。
「せっかくだから、明日、会社で蓮さんの同僚に配ってあげて。私も、会社の友だちに持っていくね」
「ありがとう」
蓮さんが穏やかに頷く。
「ふじリンゴだから日持ちするけど、収穫したては格別に美味しいんだよ」
「そうなんだ」
蓮さんは、手の中のリンゴを見つめて静かに言った。