逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「……じゃあ、行こうか」

 その一言で場は動いた。けれど──どうしてだろう、胸の奥がちくりと痛んだ。

 蓮さんはもともと、誰かの見た目を軽々しく褒めるような人じゃない。だから最初から、何も期待していなかった……はずなのに。

 どうしてこんなにも、心がざわつくのだろう。

 私はそっと息を吸い込み、自分の気持ちと向き合ってみる。

──期待なんてしていない。……そんなの、嘘だ。

「きれいだね」って言ってくれるんじゃないか。そんな淡い期待を、私は確かに抱いていた。

「……恋愛の対象にも、してもらえないのか」

 誰にも聞こえないように、小さくつぶやく。そして、その言葉ごと、胸に広がる寂しさを飲み込んだ。

 空を見上げて、もう一度、深く息を吸う。

 よし。切り替えよう。

「ごめん、お待たせ」

 私は蓮さんのあとに続いて、スモーキーグレーのフォルクスワーゲンに乗り込んだ。
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