逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 その時、友記子が声をかけてきた。

「薫、エルネストEP社の広瀬さんがお見えになってるよ」

 私は、「ありがとう。すぐ行く」と返し、深呼吸をしてから席を立った。

 エントランスには、グレーのパンツスーツにバーガンディ色のコートを羽織った広瀬さんが立っていた。指にはスマートキーを軽やかにぶら下げている。

 初めてスーパーで会ったときにも思ったが、モデルのような美しさだ。

「広瀬さん、お世話になります」

「ライティングに必要な荷物をまとめて、5分後にエントランス集合で」

 私の挨拶を軽く受け流し、彼女はすぐに踵を返した。

 いいものを作りたいという想いは同じだし、彼女が優秀なことは間違いない。従おう。

 上司に社外作業を告げてから外に出ると、エントランスの前にアウディがハザードランプを点けて止まっていた。

 サングラスをかけた運転席の広瀬さんが「乗って」と促す。私は助手席に乗り込んだ。

「プロットは?」

 さっきプリントしたばかりの用紙を手渡すと、サングラスをずらして目を通し、何も言わずに私に返す。それから広瀬さんは、車のエンジンをかけて、静かに発進させた。
< 236 / 590 >

この作品をシェア

pagetop