逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 私がそう答えると、彼女はそばかすを愛らしく寄せるように、鼻にしわを浮かべて笑った。化粧気のない素朴な顔立ちが、とてもチャーミングなひとだ。

「お世話になってるのはこっちの方よ。祐介くん、この店のアイドル芸人だもの」

「京花さん、お世辞がうまいなぁ。でもアイドルの割には、いつも出待ちゼロですけどね」

 祐介が笑いながら、私に手書きのメニューを手渡してきた。

「姉ちゃん、京花さんが作る惣菜は全部当たりだから、目を瞑って指差し注文してもいいよ。ただし、間違えてそこに放ってある隣のお客さんのスマホとかタップしないでくれよ」

 すかさず隣のサラリーマンが、笑いながら振り返る。

「こんなきれいな姉ちゃんが俺のスマホつつくなら大歓迎だ。でも、間違えて俺の奥さんに電話かけたりしたら、祐介くんも一緒に謝ってくれよ!」

 そのやり取りで店中の客がくすくす笑い出し、まるで即席の落語会のような和やかで陽気な空気が広がった。京花さんが祐介のことを「アイドル芸人」と呼んた理由も、なんとなく理解できた。
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