逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 今日の午後、倉本先生に言われた言葉が、脳裏で何度も繰り返される。

「独立したいというのなら、『記憶の片隅にいつもいて』のクレジットにあなたの名前は入れられない。スタジオ・マンサニージャ名義にするから」

 私は玄関前に立ったまま両手で顔を覆い、深いため息をついた。

* * *

 営業部長の横領事件がようやく落ち着き、会社が傾くこともなさそうだと分かったのは数日前のこと。そのタイミングで、私は倉本先生にアポイントを取った。

 そして今日の午後、予定通り先生のコーナーオフィスを訪れた。

 ブラックな環境ではあったけれど、シナリオライターとしての私を育ててくれたのは間違いなく先生だ。退社の意志とともにこれまでの感謝の気持ちを伝えようと、私は思っていた。

 先生のオフィスのドアをノックすると、すぐにドアが開く。

 今日の先生は、鮮やかなエメラルドグリーンのシルクブラウスに、大胆なレオパード柄がプリントされたスリムパンツを合わせている。まるでサファリツアーの案内人のようなファッションだ。
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