逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 風船を受け取った子どもはそれをしっかりと抱きしめ、母親が頭を下げて感謝を伝える。男性は片手を挙げて笑顔でそれを制し、コートの襟を整えながら、マフラーをふわりと巻き直した。

 その一連の動きがあまりにも優雅で、まるで映画のワンシーンを見ているような気分だった。手元にポップコーンがないのが物足りないくらいだ。私は蓮さんの方を見て「かっこよかったね!」と言った。

「うん。まるで俳優さんみたいだね」

 蓮さんも同意する。その言葉が聞こえたのか、男性がこちらを振り返り、柔らかな微笑みを向けた。

「ありがとう。君みたいな素敵な女性に褒められるなんて、光栄だな」

 思わぬ返答に一瞬戸惑うと、男性は口元に笑みを残したまま、わずかに首を傾けて私を見つめた。

「そんな驚いた顔をするなんて。こんなに綺麗な子なら、褒められることには慣れてると思ったけどね」

 余裕たっぷりの物言いに言葉を返せずにいると、男性の長い指が私の髪に伸びてきた。

「な、なに?」

 思わず身を引きそうになると、彼は「じっとしてて」と微笑みながら、私の髪を一房持ち上げた。乾いた小さな音がして、彼は指先に摘まれた枯れ葉を私に見せた。

「髪についていたよ」

「あ、ありがとう……」
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