逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 須賀さんは、ワイングラスのフットに指を添え、ゆっくりと回した。それに合わせて、中のメルローがグラスの内側に艶やかな軌跡を描く。──本当に、エレガンスという言葉を体現しているような人だ。

 私は思い切って、祐介にこのデートの話を聞いてから心に抱いていた疑問を、彼に投げかけてみた。

「須賀さん、どうして……自分は春木賢一朗じゃないって、知里さんに伝えないんですか?」

 須賀さんはグラスから視線を上げ、柔らかな微笑みを浮かべながら私を見つめた。

「君こそ、どうして僕が春木賢一朗じゃないと断言できるんだい?」

「それは……」

 私は言葉に詰まった。彼は楽しげに微笑むと、ワインを一口含んで言葉を続けた。

「僕は、否定も肯定もしていないだけなんだ。君は素直でまっすぐな女性のようだけれど、世の中には白黒はっきりさせられないことも多い。曖昧な余白を楽しむのも、大人の余裕だと思わないかい?」

 ──春木作品に出てきたセリフだ。少なくとも、彼は春木作品を熟読しているらしい。

 そのとき、蓮さんがゆったりとした笑顔を浮かべながら口を開いた。

「須賀さん、大人ならではの独自の価値観をお持ちのようですね」

 蓮さんはリラックスした動作で両手を軽く伸ばし、テーブルの上で静かに組んだ。

「もし座右の銘がありましたら、ぜひ伺いたいのですが」
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