逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 その語り口は冷静で余裕に満ち、どこか挑戦的なニュアンスも含んでいた。そんな連さんに、私は思わず目を奪われる。いつもの穏やかな蓮さんも素敵だけれど、ビジネスモード寄りの、少し強気な蓮さんもまた魅力的だ。

 須賀さんは少し考える素振りを見せ、さらりと答えた。

「そうだね『自分を愛することは、一生続くロマンスの始まりである』かな」

 蓮さんは軽く頷き、穏やかな笑みを浮かべながら言葉を返す。

「オスカー・ワイルドですね。須賀さんらしい詩的な引用(クォート)だ。ただ、春木賢一朗がいつも装丁に用いる言葉とは異なりますが」

 須賀さんの表情に、ほんの一瞬、驚きが走る。そして私も……思わず息をのんだ。

「春木賢一朗の作品には、小説の内容に関係なく、必ず記されている言葉がありますよね」

 須賀さんは黙っている。私は喉が渇いて、水を一口含んだ。

 ──蓮さん、そんなことにまで気づいていたんだ。

「それは、マーク・トウェインの言葉です。デビュー作にはタイポグラフィックの箔押しで、2作目以降ではカバーを外した本体表紙に筆記体で印刷されています。誰も気づかないような場所に同じ言葉を刻み続けているということは、それが彼にとって、特別な意味を持つ言葉であると僕は思うのですが」
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