逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「メリー・クリスマス、ボブ! なんだか最高のクリスマスになりそうっすね!」

 まるで子どもに戻ったかのような無邪気な声で、祐介が言う。

「ボブって……誰?」

 私が尋ねると、須賀さんがわざとらしくため息をつき、冷ややかな表情に戻って私を見る。

「薫くん、まさか君、ディケンズの『クリスマスキャロル』も読んだことがないのか? あの名作を?」

 言葉に詰まる私の代わりに、祐介が楽しそうに口を挟んだ。

「うち、ばあちゃんが本好きだったから、子どもの頃から本をたくさん買ってもらってたんですよ。でも姉ちゃん、『ニルスのふしぎな旅』と『赤毛のアン』ばっかり繰り返し読んでてさ。俺みたいに、いろんなジャンルをバランスよく読めばいいのに」

「だって、何度読んでも新しい発見があるし……」

 須賀さんはふっと微笑んだ。

「薫くん、それはよくわかるよ。心に響いた物語は、いつだって心の中に特等席を作るものだ。そして、人は何度でもそこへ戻りたくなる」

 私は頷きながら、カップを手に取る。コーヒーはすっかり冷めてしまったけれど、心はほんのりと温かかった。──まるで、クリスマスのささやかな魔法にかかったみたいに。

 だけど──そのときの私は、まだ知らなかったのだ。

 須賀さんと祐介、そして私がここで談笑している場面を、偶然通りかかった知里さんが、窓の外からじっと見つめていたことを……。
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