逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「ああ、名前を『原稿』というんだ。とても執着心が強い恋人でね、クリスマスも正月も僕を独占して離してくれない」

 そういうことか。私は思わず笑ってしまった。

「執筆スケジュールが大幅に遅れてしまったから、これから新幹線で定宿に向かって、館詰(かんづめ)するつもりだよ。いいものを書くには、妥協は許されないからね」

 須賀さんの言葉には迷いはなかった。彼にとって、それが何より大切な選択なのだろう。

 少し迷った末、私は思い切って口を開いた。

「須賀さん……知里さんが、あなたを春木賢一朗だと誤解している件なんですが……」

 他人のことに口を出すのは気が引けたけれど、知里さんが知らないことを自分だけが知っているという状況をこれ以上重ねるのは、どうにも居心地が悪かった。

 須賀さんは穏やかに首を横に振る。

「大丈夫だよ。館詰から戻ったら、すぐに彼女に話すつもりだ。心配しなくていい」

 そう言ったあと、須賀さんは少し照れたように微笑んだ。

「彼女の美しさだけじゃなく、その情熱にも惹かれたんだ。きちんと話をして、僕という人間を見てもらえるようにするよ」

 その誠実な言葉に、私は安心して頷いた。ああ……今日は本当に来てよかった!
< 463 / 590 >

この作品をシェア

pagetop