逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 受賞者のスピーチが終わり、私たちは拍手をした。それが止むと、譲原さんは壇上を見つめたまま静かに言った。

「椿井さん、ここからは年寄りの独り言だと思って、聞き流していただけますか」

「はい」

「春木先生は……デビュー作が最高傑作となって、消えてしまうかもしれません」

 私は驚いて、譲原さんの横顔を見た。

「それは、どうしてですか……?」

 尋ねはしたものの、私自身もその理由に心当たりがあった。

「他の出版社からのオファーで、過去作を切り売りしようとしている話は、私の耳にも入っています」

 私は深く息を吸い、ゆっくりと吐いた。譲原さんは、名刺交換をする祐介の姿を眺めながら、静かに続ける。

「今回受賞した『風が消える庭』は、確かに話題作となるでしょう。しかし、作家にとって本当に大切なのは、その先です。もし、次の作品が時間対効果を優先し、練り込みが足りないまま形になったものだとしたら、読者はどう感じるでしょうか」

「……デビュー作を好きになってくれた読者の期待を、裏切ることになりますね」

 私は視線を落とした。譲原さんは、そんな私を優しい目で見つめ、穏やかに微笑んだ。
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