逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「でもね、椿井さん。春木先生はまだ若い。だからこそ、今は思うままに進めばいいんです。私が間違いだと思う選択をしても、それが功を奏することもあるでしょうし、たとえつまずいたとしても、それを糧にできるだけの力を、春木先生は持っているはずです」

 譲原さんの表情には、幾多の作家と作品を見守ってきた編集者だけが持つ、深い洞察と愛情が滲んでいた。

「何のために書くのか。それは本当に自分が追い求めたいものなのか。ときに見失うこともあるでしょう。けれど大切なのは、一度離れてもまた戻ってこられるかどうかです」

 誰かが冗談でも言ったのか、祐介とその周囲の人が、大きな笑い声を上げる。譲原さんは、その様子を静かに見守りながら、揺るぎない声で言った。

「私は、その日が来るのを楽しみにしています。春木先生が、読者に誠実であろうとする日が──必ず来ると、信じていますから」
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