逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「そうですか……小林伊吹が、私の原稿と引き換えに取引を持ちかけたと……。いえ、私はその件については一切聞いておりませんでした」
祐介の声がわずかに低くなる。小さな変化だったが、彼の落胆はすぐにわかった。
──やっぱり、伊吹くんだったのか。
「……事情は理解しました。しかし、私自身はそのような取引を持ちかけた覚えはありませんし、オーディション合格についても、即時取り消しをお願いしたいと思っています」
それからしばらく、祐介は取引の無効を主張し続けた。しかし、ダークレイス社もまた、「春木賢一朗作品初の映像化」という話題性を、そう簡単に手放すつもりはなさそうだった。
「……また、ご連絡いたします」
祐介がそう言って通話を切る。その顔を見れば、結果は聞かなくてもわかった。契約を白紙に戻す交渉は、完全に決裂していた。
私は俯いた。知里さんの言ったとおりだった。──祐介は知らなかったとはいえ、伊吹くんが「ねこつぐら」のオーディション合格と引き換えに、春木賢一朗の次回作をダークレイス社に売ってしまっていたのだ。
祐介の、そして知里さんのやりきれない気持ちを思うと、私は何も言えなかった。
窓からは、やわらかな午後の陽が差し込んでいる。あの日、私の肩にそっと置かれた知里さんの手のような、静かで優しい温もり。
だけど今、その光は、手を伸ばしても届かないほど遠くに感じられた。
祐介の声がわずかに低くなる。小さな変化だったが、彼の落胆はすぐにわかった。
──やっぱり、伊吹くんだったのか。
「……事情は理解しました。しかし、私自身はそのような取引を持ちかけた覚えはありませんし、オーディション合格についても、即時取り消しをお願いしたいと思っています」
それからしばらく、祐介は取引の無効を主張し続けた。しかし、ダークレイス社もまた、「春木賢一朗作品初の映像化」という話題性を、そう簡単に手放すつもりはなさそうだった。
「……また、ご連絡いたします」
祐介がそう言って通話を切る。その顔を見れば、結果は聞かなくてもわかった。契約を白紙に戻す交渉は、完全に決裂していた。
私は俯いた。知里さんの言ったとおりだった。──祐介は知らなかったとはいえ、伊吹くんが「ねこつぐら」のオーディション合格と引き換えに、春木賢一朗の次回作をダークレイス社に売ってしまっていたのだ。
祐介の、そして知里さんのやりきれない気持ちを思うと、私は何も言えなかった。
窓からは、やわらかな午後の陽が差し込んでいる。あの日、私の肩にそっと置かれた知里さんの手のような、静かで優しい温もり。
だけど今、その光は、手を伸ばしても届かないほど遠くに感じられた。