逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 それから私の耳に唇を寄せて、秘密を打ち明けるようにそっと囁いた。

「祐介くんが主寝室で寝たって聞いて……もしかしたら、薫と朝まで一緒にいられるかもって、期待した」

 その言葉に、一瞬、呼吸を忘れて顔を上げる。蓮さんは、まっすぐ私を見つめていた。

「それが顔に出ないように……取り繕ってた。ごめん」

「そうなの?」

 彼は少し照れくさそうに目を伏せる。

「普段通りでいようとしたんだけど……たまに、薫のことを意識しすぎて、どうすればいいのかわからなくなる」

 私はそっと手を伸ばし、蓮さんの頬に触れた。指先から伝わってくる彼の体温が、心にまで染み込んでいくようだった。

 緩やかなカーブを描く短いくせ毛を見つけ、指先でそっとつまんで遊ばせてみる。くすぐったそうに目を細めた彼が、小さく笑った。

 ──ああ、この人のすべてが、たまらなく愛おしい。

「蓮さん、キスしたい」

 頭で考えるよりも先に、言葉がこぼれていた。蓮さんは一瞬、困ったように目を伏せ、それからゆっくりと顔を近づける。

 唇が優しく触れて、すぐに離れた。

 ──あの長野へ行く新幹線の中で、キスできるだけでいいと思っていたのに。今は違う。小さなキスだけでは、全然足りない。

 切なさが胸を締めつける。私は彼を見上げ、微かに震える声で「もっと、欲しい」と囁いた。
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