逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 蓮さんは小さく息を吐いて、そっと私の頬に触れる。そしてもう一度、ゆっくりと顔を近づけてきた。

 あと少しで唇が重なる──そう思った瞬間、彼はふっとため息をつき、わずかに顔をそらした。

「……そんな顔でお願いされたら、困る」

 かすれた声がして、指先が私の頬をなぞった。でも、それ以上は何もしてくれない。

「蓮さん……?」

 焦れて名前を呼ぶと、彼は閉じられた主寝室のドアを親指で指した。

「この状況なので、薫は今日、僕の部屋で寝てもらいます。そして、隣の部屋に祐介くんがいる状態で……薫は絶対に手を出させてくれないだろうから」

 端正な顔に、一瞬、微かな影が落ちた。それを隠すように、蓮さんはそっと私を抱き寄せる。

「これ以上したら……本当に止まらなくなる」

 胸の奥が甘く疼く。熱を帯びたその声に、心が捕まえられたような気がした。

「もし蓮さんが眠れなくなりそうなら、私はカウチでも大丈夫だから」

 瞬間、抱きしめる腕が、また少し強くなった。

「だめ。今日は一緒に寝る」

 その一言に、胸がいっぱいになった。言葉にできない想いがこみ上げて、視界が滲む。私はそっと蓮さんの背に腕を回し、体を預けた。

「蓮さん……もう少ししたら、今回のこと、ちゃんと説明するから」

 彼は私の肩に触れ、ほんのわずかに体を引いた。そして、腕の中に私を抱いたまま、まっすぐな目で見つめる。
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