逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 花束を友記子に預け、袋を覗き込むと、2種類のコーヒー豆とマグカップが入っていた。豆の袋には「余白」と「余韻」と手書きされたラベルが貼ってある。

「うちの姉夫婦がカフェを経営していて、脚本家の友達に贈りたいって話したら、特別にブレンドしてくれたの。『余白』は物語が始まる前の静けさ、『余韻』はドラマを観終わったあとに心に残るビターな味わい。そんなイメージだって」

 友記子の声は涙で震えていた。目元に溜まった涙が、今にもこぼれ落ちそうだ。

 最後に、袋の底からマグカップを取り出す。そこにはシンプルなフォントで、こう書かれていた。

 "Write your story, one sip at a time."

「一口ずつ、物語を紡いでいこう──」

 その言葉を口にした瞬間、感情が溢れて、堪えていた涙が頬を伝った。友記子と航、そしてこういう場面で必ず張り切る青木くんが、私をぎゅっと抱きしめてくれる。周囲からは温かい拍手が沸き起こった。

「みんな、本当にありがとうございました」

 声を震わせながら、私は社員一人ひとりに感謝を伝え、事前に用意していたメッセージ付きのほうじ茶フィナンシェを配った。倉本先生の分は友記子に託し、ついでに先生のオフィスに置いてある最中を回収して、みんなに配ってもらうようお願いした。
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