逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「そう……」

 それ以上、かける言葉が見つからなかった。祐介は両手で顔を覆い、絞り出すように呟く。

「姉ちゃん、俺……伊吹のこと、責めらんねーよ」

 その声には、伊吹くんへの怒りよりも、自分への苛立ちが色濃く滲んでいた。

「伊吹には、いつかデビューしようなって言ってたくせに、俺は……譲原さんと本を作るのに、夢中になってた。伊吹が仕事で稽古できなくても、『しょうがねーな』なんて言いながら、むしろ執筆できる時間が増えてラッキーくらいに考えてたんだ。芸人は……いつの間にか、俺の中では終わった夢になってた」

 祐介の声が、少しずつかすれていく。見てみぬふりをしていたことへの罪悪感が、胸の奥から溢れ出てきているかのようだった。

「伊吹も、本当は……お菓子の商品開発がやりたいんだろうなって、分かってたんだ。小学生のころからずっと言ってたし、珍しいお菓子を見つけると、他社の製品でも嬉しそうに買っててさ。『こんなお菓子作りたい』って話してるときの伊吹は、本当に楽しそうだった。でも……企画はなかなか通らなくて……」

 祐介の拳が、膝の上でわずかに震えた。

「多分、芸人の夢は、伊吹にとっては逃げ場所だったんだと思う。仕事でうまくいかない自分を保つための……最後の支えみたいな。だから、どうしてもオーディションに受かりたくて、こんな……」
< 534 / 590 >

この作品をシェア

pagetop