逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
 きっと大丈夫だよ──そう言ってあげたい。でも、祐介の心にどれだけ響くだろうか。祐介と伊吹くんが築いてきた長い友情を考えると、軽はずみな言葉は言いたくなかった。

 私は唇を噛んで、「うん」とだけ答えた。

 タクシーが五階建ての単身者向けマンションの前で停車する。重い空気を抱えたまま、私たちは祐介の案内で四階の角部屋へ向かった。

 一度チャイムを押したけれど、返事はない。

「伊吹、おい、いないのか?」

 祐介がドア越しに呼びかけたが、室内は沈黙を保ったままだ。彼は小さく息をついてから、スマホを取り出して操作した。数秒後、室内から着信音が微かに聞こえてきた。

「伊吹、いるんだろ、開けてくれ!」

 その声が、廊下に響く。これで出てこなかったら、どうすれば──そう考えたとき、ドアの内側からカチリと鍵の外れる音がして、ゆっくりとドアが開いた。

 現れたのは、ジャージ姿の伊吹くんだった。顔は青ざめ、目元と鼻は真っ赤に腫れている。長い間、泣き続けていたようだった。

「……祐介、ごめん」

 かすれた声でそう言うと、伊吹くんは視線を落とし、肩を震わせる。実年齢よりも幼く見える顔立ちが、今は無防備なまでに脆く見えた。

「伊吹、とりあえず中に入れてくれ。姉ちゃんも関係者だから、入ってもいいか?」

 祐介の静かな言葉に、伊吹くんは小さくうなずく。そして一歩下がり、私たちを招き入れるように、ドアを開いた。
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