逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「伊吹くんと話しているみたいで、ちょっと遅くなるかも」

 それは嘘ではなかった。私は嘘をつくのが苦手だから、祐介が伊吹くんの部屋に泊まるだろうと予想しつつ、「帰ってきたら、ちゃんと鍵を閉めるんだよ?」と伝えておいたのだ。

 これで、私の中で祐介は「帰ってくるかもしれない」枠の人になった。祐介が帰ってくる可能性を伝えておけば、蓮さんに余計な期待をさせることもない……はずだ。

 蓮さんは「そう」と短く返し、端正な顔に微笑みを浮かべる。

「今日は久しぶりに僕が肉じゃがを作ったんだ。味見してくれる?」

「もちろん!」

 蓮さんは豆皿に少しだけ具材と汁を盛り、私に差し出した。一口食べた瞬間、懐かしい味が舌の上に広がり、ふわりと記憶が蘇る。まるで実家のダイニングルームに戻ったような感覚だった。

「──すごい、おばあちゃんの味とまったく同じだ!」

 驚いて蓮さんを見つめる。すぐに心当たりに行きついた。

「わかった、祐介のレシピだ。あの、グラム単位で細かく書いてあるやつを教えてもらったんでしょ?」

 蓮さんは楽しげに、小さく頷く。

「まあ、そんなところかな」

「今ね、この一口で、実家の思い出が一気に蘇ってきたの。祐介が言ってた『プルーストのマドレーヌ』って、こういうことなんだね」

「なるほど……そうなんだね」

 そう言いながら、蓮さんは何かを理解したように、穏やかに微笑んだ。

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