逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX

第87話

 タクシーの中で、祐介はドアにもたれながら、窓の外をぼんやりと見つめていた。その目は、流れる景色を映しているようでいて、実際にはもっと遠い何かを見ているようだった。

 もしかすると、春木賢一朗としての時間を思い返しているのかもしれない──それこそ、走馬灯のように。

 そう思うと、私は声をかけることができなかった。

 しばらく沈黙が続いたあと、ふいに祐介から話しかけてきた。

「姉ちゃん、頼みがあるんだ」

 横を向くと、祐介のまっすぐな視線とぶつかった。その瞳には悲しみが滲んでいたが、それ以上に揺るぎない決意が宿っていた。

「今回の裏取引の件、姉ちゃんは何も知らなかったことにしておいてほしい。譲原さんと話すまで、本当に知らなかったんだから、それは嘘じゃないだろ」

「でも、それは祐介も同じじゃない」

 彼は小さく笑い、わずかに首を振った。

「俺はねこつぐらの一人だから、責任はあるよ。それに、蓮さんはもちろんだけど、姉ちゃんは広瀬さんとも信頼し合ってるんだなって、ずっと思ってた。……姉ちゃんが築いてきた関係を、俺、壊したくないんだ」

 その言葉に、祐介が私を守ろうとしてくれているのがわかって、胸が締め付けられた。
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