逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「明日、雑誌の編集長と食事会があるのよ。次号インタビューの打ち合わせも兼ねて。だから、『きみあい』のチェックはチャチャッと終わらせたいの。わかる?」

 倉本先生は、今すぐ出せと言わんばかりに手を翻して私に突きつけた。

「明日の朝イチ、9時までにデータを送信してね。1分でも遅れちゃだめよ」

 私は唇を噛み締め、心の中の嵐を必死に抑え「はい」と答えた。

 本当は、無理な前倒しだと抗議したい。でも、先生に逆らうなんてできるはずがない。他の選択肢なんて、最初からないのだ。

 倉本先生は瞬く間に機嫌をなおし、満面の笑みを浮かべ、

「分かったならいいのよ。椿井ちゃんには期待してるんだから」

 そう言い残して去っていった。

 ──薫はそれでいいの?

 友記子の言葉が頭に響く。

 いいわけない。

 でも、このまま諦めたら、夢はただの夢で終わってしまう。

 私はまぶたをもみほぐしながら、デスクに戻った。

 急須の中に入ったままのほうじ茶のことを思い出したのは、その日の深夜。結局家には帰れず、目をしょぼしょぼさせながら推敲をしているときだった。
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