ぶーってよばないで!
あれから統一試験も無事に終わり、大学の入試も終わった。もちろん、周ちゃんは日本の大学入学試験を受けなかった。瑛里は『周司が居ないってこんな感じか。全然寂しくないね!』なあんて強がっていたけれど、私は、心にポッカリ穴が空いたような気持ちだった。どこか寂しくて落ち着かない時間を過ごしていた。
この間、周ちゃんに言われた言葉が頭をぐるぐる回っている。これは、どういうことなんだろう。私はどうしたいんだろう。自分でもよくわからない。
 
【橋羽西バス停】
「真瑠璃おはよう!」
「隆也!」
「やっと入試も終わったな。結果はわからないけれど、気分晴れ晴れしているよ。」
「本当にね。試験が終わっちゃったし、もう、今できることはないもんね。」
「そう。結果を待つのみだな。」
プシュー
バスの扉が開いて、隆也とバスに乗り込む。太っていても、痩せていても隆也の態度は全く変わらない。いつも同じ。
「おっ!真瑠璃、あそこ空いてるから、座ろうぜ!」
バスの二人がけの席は、今はもう、私の方が領土を奪うなんてことも無くなった。こうして二人でバスに揺られている時間も、あと少し。私たちの高校生活も、ゴールが見えている。
「そういえば真瑠璃、今日の夕方時間ある?」
「うん!どうしたの?」
「バレンタインチョコ、どうしても食べきれなくてさ。少しもらって欲しいんだ!」
「いいの⁉︎」
「せっかくくれた子達に申し訳ないから、一粒ずつは食べようと思って。」
隆也のそういう優しさ、素敵だな。
「そうだ!私、今日久しぶりに清好堂へ行きたいんだ!隆也、どう?」
「おー!いいな!じゃあ、校門で待ち合わせよう。十四時でいい?」
「うん!」
隆也と待ち合わせ。
考えたら、高校生になって初めてかも。
おばあちゃん、あれからどうしているかな。本宮先生も、あれからどうしているかな。
 
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