ぶーってよばないで!

本当の気持ち

【放課後】
キーンコーンカーンコーン
「先生、さようなら〜」
「はい、また来週ね!」
今日は、本宮先生の都合でレッスンがお休み。私はレッスン室で自主練をした。周ちゃんは、ウィーンへ留学する手続きが忙しいようで学校をお休みしている。瑛里は、レッスンがないならさっさと帰る!ってお昼で帰っちゃった。
校門までの並木道も、あと何回歩けるんだろう。
もう少しで卒業だね。三年間あっという間だった。卒業すると、周ちゃんとは会えなくなる。寂しい。
私、周ちゃんのことをどう思っているんだろう。
自分でも、わからない。
そろそろ待ち合わせの時間だね。
校門のどの辺りで待っていたらいいかな。
ちょっと隠れて、隆也を驚かせちゃおうかな。

「ねえ隆也?東京大学受かってたら、一緒に住まない?お願い!」
「いや、それはちょっと…。」
「お願い!お願い!私、隆也と一緒の大学へ行きたかったから、頑張ったんだよ!」
「いや〜でもそれはちょっと…。」
声がする方を見ると、隆也が女の子に腕を組まれながら歩いてくるのが見えた。あ!あの子、この前、瑛里とバスの中から見た隆也の彼女だ⁉︎
「お・ね・が・い!隆也と一緒に住みたいの!」
隆也と一緒に住みたいの⁉︎すっごく大胆!どうしよう、ここにいていいのかな、えっと隠れる⁉︎どうする⁉︎隠れろ!
「妃名子、ごめん。俺、好きな子が居るんだ。」
「ええー⁉︎やだやだ、嘘でしょ⁉︎」
「ごめん。」
「嫌だ。冗談でしょ⁉︎好きな子って妃名子でしょ?」
「妃名子は、同級生として同じ医者を目指す者として尊敬している。」
「えー⁉︎ショック。立ち直れないかも。じゃあ、誰?好きな子って誰?教えてよ!」
「それは…内緒。」
「えー⁉︎妃名子のことフッたんだから、教えてよ〜。」
「妃名子の知らない子。」
「バレンタインチョコレートもらった?その子から。」
「えっと…もらっ…」
隆也の好きな子。
どうしたんだろう、胸のドキドキが止まらない。
身体が熱い。
「俺、今日待ち合わせしてるから、ここで。」
「オッケー!妃名子は帰った方が良いのね?」
「また来週な!」
「妃名子をフッたこと後悔させちゃうからね!私も、隆也のこと同級生として同じ医者を目指す者として尊敬している!これからもよろしく!」
「おう!」
「バレンタイン、次こそ楽しみだね!」
「おう!」
妃名子さん。とてもスタイルが良い素敵な女性。あんなに素敵な女性に告白されても、びくともしない隆也って。。
「隆也…お待たせ、ごめんね待たせて!」
自分でも良くわかる…なんだかぎこちない。
「ううん、俺も今きたところ。早速、おばあちゃんのところ、行く?」
「う、うん!」
「真瑠璃、顔赤いけど、まさか熱?具合い悪い?」
隆也の手のひらが私のおでこに当たる。私の心臓が、ドキドキ音をたてている。まずい。このままだと隆也に聞こえちゃう。神様、どうかこの鼓動が隆也に聞こえませんように。
「熱は無さそうだな!歩ける?」
「あっ歩ける!おばあちゃんに会ったら元気もらえるかもしれない。」
「そうだな!ほら?カバン持ってあげるよ。」
どうしたんだろう、いつものように隆也の顔を見られない。
隆也の好きな子って…。
私は、私の気持ちは…。
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