復讐殺人日記
「日奈子にも見えてる?」
ガラス越しの影を見つめたまま私は日奈子に聞いた。

日奈子が隣でうなづくのがわかった。
日奈子も影に釘づけになって動けないでいたのだ。

「ちょっとふたりとも、そんなにこのデカイくまが欲しいの?」
あきれ声で瑞穂が聞いてくる。

「瑞穂、こっち来て。ここ見て」
手招きすると瑞穂が興味を示したように近づいてきた。

「なに? どれを見てって?」

「ここ。ガラスに映ってる影が見える?」
「影って……あ」
小さく呟いた後、無言になってしまった。

ガラス越しに瑞穂を見ると半分口をあけた状態で固まっているのがわかった。
トイレでは私しか見えなかったけれど、今度はみんなに見えているみたいだ。

私は無理やり視線を影から離して深呼吸をした。
影を見ている間、無意識のうちに呼吸が浅くなってしまっていたみたいだ。
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