妃候補なんて興味ありません!
フィリップ王子が大きく目を見開く。
それは昨日の夕飯時にシーラが見せてくれた手品で間違いなかった。

ただそれは現実のものと見紛うほどの迫力がある。
あれを使って相手をひるませるつもりか。
フィリップ王子がそう考えた次の瞬間には龍はシーラの体から全容を現して天井へと舞い上がった。

赤い兵士たちはさすがに驚きの声を上げて足を止める。
「早く逃げてください!」

シーラの声に我に返ったフィリップ王子はリディアの体を支えて駆け出した。
小柄なリディアは普段の鍛錬で持ち上げている鉄の塊よりも遥かに軽い。

フィリップ王子はあっという間に地下室への入り口までやってきていた。
そのドアを開けてリディアを中に押し込むと、自分はすぐさまシーラの元へと戻った。

そこで見たのは敵軍へ向けて火を吹く龍の姿だった。
そしてそれを操っているのは紛れもないシーラなのだ。

「今こそあなたの力を見せてちょうだい!」
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