【短】卒業〜各務昴の場合〜
卒業式には祝いの花束を
卒業式当日。
普段は一堂に集まる事の少ない生徒達が一箇所に集められて式典に臨む様子は中々圧巻だ。
私服しか見た事のなかった生徒がこの日はスーツをビシッと着こなし髪をセットしている様を見て、何やら俺まで胸に込み上げてくるものがある。
そんな数多いる生徒の中から自然と彼女を見つけられるのは想いの為せる技か。
今日は彼女の門出の日だが、俺にとっては一世一代の勝負の日だ。
スーツの襟元を正す俺を見て、隣の教授が「なぜお前が?」と不思議そうな顔をしているが、気付かないふりをした。
「卒業おめでとう」
緊張しながら花束を抱えて彼女の前に現れると、彼女は怪訝な顔をして花束を一瞥した後、他の女から貰ったものかと思ったと言ってくる。それが嫉妬のようで少し嬉しい。
そんな訳ないだろう。俺は出逢った瞬間からお前しか見えていないというのに。
お前の為ならこんなキザな真似もできる。だが恥ずかしさと緊張でぐちゃぐちゃな俺は何とかして花束を受け取ってもらおうと半ば強引に彼女に花束を押し付けた。
「俺様の貴重な労力を費やした花束を受け取ったお前は、今夜俺に付き合う義務がある。駅前の○○ホテルのロビーに17時だ。遅れるなよ」
多少強引な自覚はある。だが何としても来てもらわないと困るという気持ちが俺を早口にさせる。
周りには俺の発言を耳にして騒つく生徒達。勿論これも計画通り。さっきから何とか最後に彼女とお近づきになろうとうろつく男子達を牽制するにはこれくらいで丁度良い。彼女の意識もそちらではなく俺にしっかり向けさせる事に成功して、この場は満足だ。
「私、行きませんよ!」
その声に振り返れば、困惑顔の彼女。反対に俺はすっかり落ち着いていつものペースを取り戻していた。
「お前は絶対来るよ。絶対だ」
それだけ言い置いてその場を後にした。
普段は一堂に集まる事の少ない生徒達が一箇所に集められて式典に臨む様子は中々圧巻だ。
私服しか見た事のなかった生徒がこの日はスーツをビシッと着こなし髪をセットしている様を見て、何やら俺まで胸に込み上げてくるものがある。
そんな数多いる生徒の中から自然と彼女を見つけられるのは想いの為せる技か。
今日は彼女の門出の日だが、俺にとっては一世一代の勝負の日だ。
スーツの襟元を正す俺を見て、隣の教授が「なぜお前が?」と不思議そうな顔をしているが、気付かないふりをした。
「卒業おめでとう」
緊張しながら花束を抱えて彼女の前に現れると、彼女は怪訝な顔をして花束を一瞥した後、他の女から貰ったものかと思ったと言ってくる。それが嫉妬のようで少し嬉しい。
そんな訳ないだろう。俺は出逢った瞬間からお前しか見えていないというのに。
お前の為ならこんなキザな真似もできる。だが恥ずかしさと緊張でぐちゃぐちゃな俺は何とかして花束を受け取ってもらおうと半ば強引に彼女に花束を押し付けた。
「俺様の貴重な労力を費やした花束を受け取ったお前は、今夜俺に付き合う義務がある。駅前の○○ホテルのロビーに17時だ。遅れるなよ」
多少強引な自覚はある。だが何としても来てもらわないと困るという気持ちが俺を早口にさせる。
周りには俺の発言を耳にして騒つく生徒達。勿論これも計画通り。さっきから何とか最後に彼女とお近づきになろうとうろつく男子達を牽制するにはこれくらいで丁度良い。彼女の意識もそちらではなく俺にしっかり向けさせる事に成功して、この場は満足だ。
「私、行きませんよ!」
その声に振り返れば、困惑顔の彼女。反対に俺はすっかり落ち着いていつものペースを取り戻していた。
「お前は絶対来るよ。絶対だ」
それだけ言い置いてその場を後にした。