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きっと、この人が細川正美の母親なのだろう。
美人なのに表情に影がみられた。

「あ、あの、私たち正美ちゃんの友達で、新井香と中村慶太って言います」

香がたどたどしく自己紹介をして、慶太と一緒に頭を下げた。
「正美の友達？　あなたたちも同じ中学校なの？」

「いえ、私達は河川敷のお祭りで正美ちゃんと知り合った、后丘中学の生徒です」
予め用意していた設定を説明すると、女性は少し訝しげな表情になった。

もし正美が河川敷のお祭りに参加したことがなければ、この時点で嘘がバレてしまったことになる。

けれどふたりが河川敷のお祭りという設定にしたのは、それがこの街で一番大きなお祭りだからだった。

当日には県外からも沢山のお客さんがやってきて、花火大会や屋台を楽しんでいる。
「あら、そうなのね？」

しばらく香と慶太の顔を交互に見つめていた女性が、ようやく納得したように相好を崩した。

「それで、なにか用事？」