眠る彼女の世話係
に
俺は再び、彼女の眠る家に訪れていた。前任のおばちゃんから預かっていた鍵でがちゃりとロックを解除する。
「おじゃましまーす……」
悪いことをしている訳でもないのに、思わず抜き足差し足気味になってしまう。起きていたらいいなと淡い期待を抱きながら彼女の部屋をノックしたが、返事はなかった。諦めてドアをゆっくりと開けて、彼女のベッドのそばに座った。
あまりにも静かだったから息をしているのか心配になってじっと観察して、すーすーと寝息を立てているのを確認して安堵した。
「申し遅れました、本日より家事代行を務めさせていただきます、東堂夏樹です、よろしくお願いします」
本人には聞こえてないだろう。だけど俺はなんでかじっとしてられなくて、その綺麗な寝顔にコソコソ話をしているみたいな声で話しかけていた。なんの返答もないことを確認した俺は、少しその部屋を見渡した。彼女の部屋はなんだか寂しいくらいに物がなくて、綺麗に整っているせいだろうか、生活感がなかったーーベッドのサイドテーブルにあるゼリー飲料と飲みかけの水、乱雑に置かれた薬を除いて。
それを見て俺はあ、とスマホに送られてきた仕事マニュアルを思い出した。まず最初に書かれていたのは、そのサイドテーブルに置かれた物を新しく取り替えることだった。ゼリー飲料は家の中の物置から、数種類の薬はリビングにある棚から取り出して、水は新しいコップに冷蔵庫に入ってたペットボトルの水を注いだ。
俺は彼女とまだ話をしたことがない。それどころか彼女がまともに起きているところを見ていない。俺はそのまま彼女目覚めるのを待ちたかったが、残念ながらまだまだそのマニュアルには文章が続いていたので、しぶしぶ別の仕事に移ることにしたのだった。
「おじゃましまーす……」
悪いことをしている訳でもないのに、思わず抜き足差し足気味になってしまう。起きていたらいいなと淡い期待を抱きながら彼女の部屋をノックしたが、返事はなかった。諦めてドアをゆっくりと開けて、彼女のベッドのそばに座った。
あまりにも静かだったから息をしているのか心配になってじっと観察して、すーすーと寝息を立てているのを確認して安堵した。
「申し遅れました、本日より家事代行を務めさせていただきます、東堂夏樹です、よろしくお願いします」
本人には聞こえてないだろう。だけど俺はなんでかじっとしてられなくて、その綺麗な寝顔にコソコソ話をしているみたいな声で話しかけていた。なんの返答もないことを確認した俺は、少しその部屋を見渡した。彼女の部屋はなんだか寂しいくらいに物がなくて、綺麗に整っているせいだろうか、生活感がなかったーーベッドのサイドテーブルにあるゼリー飲料と飲みかけの水、乱雑に置かれた薬を除いて。
それを見て俺はあ、とスマホに送られてきた仕事マニュアルを思い出した。まず最初に書かれていたのは、そのサイドテーブルに置かれた物を新しく取り替えることだった。ゼリー飲料は家の中の物置から、数種類の薬はリビングにある棚から取り出して、水は新しいコップに冷蔵庫に入ってたペットボトルの水を注いだ。
俺は彼女とまだ話をしたことがない。それどころか彼女がまともに起きているところを見ていない。俺はそのまま彼女目覚めるのを待ちたかったが、残念ながらまだまだそのマニュアルには文章が続いていたので、しぶしぶ別の仕事に移ることにしたのだった。