悪役令嬢を期待されたので完璧にやり遂げます!
鷹揚に頷くアレンだが、普通は執事見習いとして諫めるべきところのはず。
いくら主の婚約者の行いが目に余るとはいえ、相手は第一王子なのだ。
これでは共犯になってしまう。
「ねえ、私が言うのもなんだけど、本来ならアレンは私の暴走を止めるべきなんじゃない?」
戸惑いの表情でマリアンヌが訊くと、アレンは口角を上げて笑った。
「お嬢様が失敗するはずがありませんから。その腕力と脚力を思う存分発揮してください」
その言葉に納得したマリアンヌもつられて笑みを零す。
そう、彼女には令嬢らしからぬすごい特技があるのだ。
子供の頃から、マリアンヌはスポーツ万能だった。
いや、万能を通り越して異常な身体能力の持ち主だった。
走れば大人の男性より圧倒的に早く、物を投げれば遥か彼方、高いところから飛び降りてもピンピンしている。
マリアンヌのこの特殊な能力に最初に気付いた前執事長は、彼女にこの力を秘密にすることを誓わせた。
結果、偶然見られてしまったアレン以外に現在王都でこの力のことを知っている者はいない。
前執事長は引退をする際、マリアンヌの力のことは墓まで持っていくと言っていた。
「ようやくこの能力を活かせる時が来たようね。嫌がらせをした上で、自分のアリバイもばっちり作ってやるわ!」
「その意気です、お嬢様。…………俺にもやっとチャンスが回って来たみたいだな。断罪返しが無事に済んだ後は――覚悟しておいで、マリアンヌ」
高らかに右の拳を突き上げるマリアンヌの後ろで、前髪に覆われた目をキラリと光らせながらアレンが呟いたことなど、彼女は知る由も無かった。
いくら主の婚約者の行いが目に余るとはいえ、相手は第一王子なのだ。
これでは共犯になってしまう。
「ねえ、私が言うのもなんだけど、本来ならアレンは私の暴走を止めるべきなんじゃない?」
戸惑いの表情でマリアンヌが訊くと、アレンは口角を上げて笑った。
「お嬢様が失敗するはずがありませんから。その腕力と脚力を思う存分発揮してください」
その言葉に納得したマリアンヌもつられて笑みを零す。
そう、彼女には令嬢らしからぬすごい特技があるのだ。
子供の頃から、マリアンヌはスポーツ万能だった。
いや、万能を通り越して異常な身体能力の持ち主だった。
走れば大人の男性より圧倒的に早く、物を投げれば遥か彼方、高いところから飛び降りてもピンピンしている。
マリアンヌのこの特殊な能力に最初に気付いた前執事長は、彼女にこの力を秘密にすることを誓わせた。
結果、偶然見られてしまったアレン以外に現在王都でこの力のことを知っている者はいない。
前執事長は引退をする際、マリアンヌの力のことは墓まで持っていくと言っていた。
「ようやくこの能力を活かせる時が来たようね。嫌がらせをした上で、自分のアリバイもばっちり作ってやるわ!」
「その意気です、お嬢様。…………俺にもやっとチャンスが回って来たみたいだな。断罪返しが無事に済んだ後は――覚悟しておいで、マリアンヌ」
高らかに右の拳を突き上げるマリアンヌの後ろで、前髪に覆われた目をキラリと光らせながらアレンが呟いたことなど、彼女は知る由も無かった。