悪役令嬢を期待されたので完璧にやり遂げます!
「ええ、本当に。ロザリー様ほどの恥知らずな方、わたくし見たことがございませんわ。男爵令嬢って最低限のマナーすらご存じではないのね。それともあの方って頭まで……。あら、あなたもそう思う? ウフフ、ねえ。お気の毒だこと」

まるで数人で話しているかのように、わざと取り巻きに相槌を打つフリをするマリアンヌ。
予習した小説の中の悪役令嬢には、たいてい数人の取り巻きの令嬢たちがいた為、忠実に再現した結果だった。

考えていた台詞を高らかに言い切ったマリアンヌは、ダッシュで彼らがいる廊下とは反対側の窓からベランダへと脱出する。
窓を外側から閉めてしゃがんだところで、ジャルダンが教室の扉を開けながら怒鳴る声が聞こえてきた。

「誰だ! ロザリーを貶めるやつは私が許さないぞ! ……なにっ? どうして誰もいないんだ?」
「ひ、ひどいですぅ……。今の声、絶対マリアンヌ様でしたわ」
「確かに似ていたな。マリアンヌ、どこにいる! 今すぐ出てこい!」

出てこいと言われて、のこのこ出ていくはずがないじゃないの。
でも私の悪口だとちゃんと気付いてもらえたみたいね。
これで任務完了!
見つかる前に逃げないと。

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