若頭は拾い猫を甘やかしたい。
「えー、酷いな〜。名前くらい良くない?」


そして後ろから耳元で囁かれる。

……


「月夜、都。名前言ったから離れて。」


「へぇ、都ちゃん。可愛い名前だね。」


離れて、と言っているのにまるでその部分だけ聞こえないかのように王子は一向に離れてくれない。


「私、離れてって言った。」


「んー、どうしよっかな?こっち向いて3秒間俺のこと見つめてくれたら良いよ。」



後ろから楽しそうな口調でそんな変なことを言う王子。


…不思議な条件。
でも3秒だけで帰れるんだったら全然いいや。


「分かった。」



そんな思いで後ろを振り向くと、すぐそこには王子の顔があった。


思ったより近くにあったんだ。


「じゃあ、あなたが数えて。」


「……え?あ、うん。じゃあ数えるよ、」



そして私は王子の目をじっと見つめ始めた。


「いーち、にーい、」



3、その数を言う前に…



ちゅっ

…と、私の頬に柔らかいものが当たった。

すぐ近くには王子の顔が。


「隙あり〜。」



さっきまで見せていた笑みとは違う笑みを浮かべているこの男。


…はぁ、最悪。



「……あなた嫌い。」




私はそう言うと、鞄を持って資料室を出た。



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