超人気美男子に目を付けられた平凡女は平和な寮生活を求めて苦悩する
第43話 美男子は取り戻した日常に幸せを嚙みしめる
「ふぅん」
一緒に図書館へ入ってくるアンセムとテラスを見て、カイは嬉しそうに破顔した。
「こんにちは」
アンセムは清々しい笑顔だ。
「カイさんこんにちは」
テラスはちょっと複雑な表情。
すぐにいつもの調子を取り戻せるほど図太くはないのだ。鈍いけど。
「久しぶりのツーショットだなぁ。なんだ、結局付き合うことになったのか?」
違うだろうなと思いつつ、あえて聞いてみるカイ。
2人の、特にテラスの反応が見たいのだ。面白いから。
「違います」
即否定するテラス。
「なんだ、割と普通の反応だったな」
「なにを期待していたんですか…」
なぜかガッカリしているカイに、テラスは脱力した。
「で、なんで仲直りしたんだ?」
カイは再度質問をした。
「いろいろな誤解がすべて解けたんです」
アンセムは短く説明する。
この回答では何もわからないも同然だが、2人がこうして図書館に揃ったことがカイは嬉しくて、それ以上突っ込んで聞くことはなかった。
「そうか、良かったな」
2人に向けてカイは言った。
「とはいえ、またテラスと仲良くなれたからって、手伝いをいきなり減らされるのは困るぞ」
「大丈夫ですよ」
アンセムはテラスを見た。
「これからは、テラスも手伝ってくれるだろうし。戦力2倍」
「勝手に決めないでよ」
じとっとアンセムを睨むテラス。
「そうか!そうだよな。テラスは僕に借りがたくさんあるしなぁ」
バンバンと、カイはテラスの肩を叩いた。
「2人して、私を陥れようとしてない?」
「早速2人に頼みたい仕事があるんだ」
テラスの発言は見事に無視された。
涙が出るほど悩んだときに話を聞いてくれたカイと、自分の浅はかな決断で辛い思いを強いてしまったアンセムには、テラスは当分逆らえない。
テラスは諦めて腹をくくるのであった。
-----------------------
図書館へ来たナミルは、アンセムとテラスが作業をしている姿を見止めた。
2人は談笑しながら手を動かしていた。
アンセムは、優しい眼差しで愛おしそうにテラスを見ている。
テラスはそれに気付いているのかいないのか。
見ているとイライラしてきたので、目を反らしてカイに話しかけた。
「結局、あの2人、そういうことになったんですか?」
カイは顔を上げた。
「こんにちは」
挨拶を忘れていたことに気付いて、ナミルは慌ててお辞儀をする。
「ああ、和解したようだな」
「やっぱり、アンセムさんに惚れない女はいないってことですね」
「いや、未だにアンセムの片思いは続行中だ」
「そうなんですか?」
信じられない!とばかりに思わずテラスを見るナミル。
一体あの女の神経はどうなっているのか。
「あんまり邪魔するなよ」
「邪魔なんて、私なんか眼中にないんですから、するだけ無意味です」
ちょっと拗ねたように、そして悟ったように言うナミルを見て、カイは少しだけ優しい気持ちになった。
「まぁ、ナミルも辛いだろうが、しばらくはアンセムの恋を見守ってやってくれ」
ナミルはカイを見た。
「あれ?少し優しいこと言いました?」
「僕は君が好きじゃないが、本音をそのまま口にする所は気に入ってるからな」
「微妙な所を気に入られても、嬉しくないです」
ぷいっとそっぽを向いて、ナミルは図書コーナーへ行ってしまった。
-----------------------
再びテラスと話せるようになってから、アンセムは毎日幸せを噛み締めていた。
最初はぎごちさが残るテラスだったが、1日経つころには以前と同じように明るい表情を見せ、軽口も叩いてくれるようになった。
やはりテラスと過ごす時間は格別だ。
よくぞ2ヶ月も耐えられたと思う。
しかし、テラスの反応がいつまでも以前と同じでは困るのだ。
友人から特別な存在に昇格しなければ。
カイに頼まれた仕事を2人でしていても、告白を忘れてるのではと思うほどに、テラスはアンセムを男として意識しているそぶりをみせない。
さて、どうするか。
焦るつもりはないが、いつまでもただの友人でいる気もないアンセムは、仕事をしながらもふと考え込んでしまう。
「どうしたの?」
つい作業の手が止まってしまい、テラスに不思議そうに見られてしまった。
「少し休憩しないか?」
せっかくなので提案してみる。
今回の仕事は古い書物の傷んだ部分の修正で、手先と目を使う細かくて疲れる作業だった。
「うん。そうだね」
テラスが笑顔で頷いた。
その笑顔を見るだけで、じ~んと気持ちがあったかくなるアンセム。
「今はこれでいいか」
小さく呟いた。
「何か言った?」
「いや、行こうか」
そして2人は席を立った。
「カイさん、休憩いいですか?」
そう言って、テラスは本をカイに渡した。
アンセムもそれに続く。
「おお、今日はもういいぞ。2人でお茶でもしてきたらどうだ?」
カイは気を利かせた。
「まだ大丈夫ですよ」
カイの意図を読めないテラス。
「2人きりでお茶でもしてきたらどうだ?」
カイにもう一度言われて、ようやく何が言いたいのか理解した。
「そこでいいですよ」
テラスはカウンターの中にある休憩室を指差す。
「まぁまぁ、2人でお茶してこい」
「いいですってば」
ちょっとムキになるテラス。
「お茶してこい」
カイも譲らない。
アンセムは2人の様子を見て苦笑した。
「テラス、行こう」
そして優しくテラスを促す。
「ええ!?だって、カイさん絶対面白がってるだけだし」
「ふふ~ん」
カイはニヤニヤしながら2人を見た。
「オレはテラスと2人きりの方が嬉しいよ」
「だっ…」
アンセムの発言に口をパクパクさせるテラス。
相変わらず涼しい顔で王子様のセリフを口にする。
「行ってこい~」
カイは手をひらひらさせた。
「はい。お先に失礼します」
そう言って、アンセムはテラスの手をとると、出口へ向かって行った。
テラスは納得行かない顔をしつつも、それに従った。
一緒に図書館へ入ってくるアンセムとテラスを見て、カイは嬉しそうに破顔した。
「こんにちは」
アンセムは清々しい笑顔だ。
「カイさんこんにちは」
テラスはちょっと複雑な表情。
すぐにいつもの調子を取り戻せるほど図太くはないのだ。鈍いけど。
「久しぶりのツーショットだなぁ。なんだ、結局付き合うことになったのか?」
違うだろうなと思いつつ、あえて聞いてみるカイ。
2人の、特にテラスの反応が見たいのだ。面白いから。
「違います」
即否定するテラス。
「なんだ、割と普通の反応だったな」
「なにを期待していたんですか…」
なぜかガッカリしているカイに、テラスは脱力した。
「で、なんで仲直りしたんだ?」
カイは再度質問をした。
「いろいろな誤解がすべて解けたんです」
アンセムは短く説明する。
この回答では何もわからないも同然だが、2人がこうして図書館に揃ったことがカイは嬉しくて、それ以上突っ込んで聞くことはなかった。
「そうか、良かったな」
2人に向けてカイは言った。
「とはいえ、またテラスと仲良くなれたからって、手伝いをいきなり減らされるのは困るぞ」
「大丈夫ですよ」
アンセムはテラスを見た。
「これからは、テラスも手伝ってくれるだろうし。戦力2倍」
「勝手に決めないでよ」
じとっとアンセムを睨むテラス。
「そうか!そうだよな。テラスは僕に借りがたくさんあるしなぁ」
バンバンと、カイはテラスの肩を叩いた。
「2人して、私を陥れようとしてない?」
「早速2人に頼みたい仕事があるんだ」
テラスの発言は見事に無視された。
涙が出るほど悩んだときに話を聞いてくれたカイと、自分の浅はかな決断で辛い思いを強いてしまったアンセムには、テラスは当分逆らえない。
テラスは諦めて腹をくくるのであった。
-----------------------
図書館へ来たナミルは、アンセムとテラスが作業をしている姿を見止めた。
2人は談笑しながら手を動かしていた。
アンセムは、優しい眼差しで愛おしそうにテラスを見ている。
テラスはそれに気付いているのかいないのか。
見ているとイライラしてきたので、目を反らしてカイに話しかけた。
「結局、あの2人、そういうことになったんですか?」
カイは顔を上げた。
「こんにちは」
挨拶を忘れていたことに気付いて、ナミルは慌ててお辞儀をする。
「ああ、和解したようだな」
「やっぱり、アンセムさんに惚れない女はいないってことですね」
「いや、未だにアンセムの片思いは続行中だ」
「そうなんですか?」
信じられない!とばかりに思わずテラスを見るナミル。
一体あの女の神経はどうなっているのか。
「あんまり邪魔するなよ」
「邪魔なんて、私なんか眼中にないんですから、するだけ無意味です」
ちょっと拗ねたように、そして悟ったように言うナミルを見て、カイは少しだけ優しい気持ちになった。
「まぁ、ナミルも辛いだろうが、しばらくはアンセムの恋を見守ってやってくれ」
ナミルはカイを見た。
「あれ?少し優しいこと言いました?」
「僕は君が好きじゃないが、本音をそのまま口にする所は気に入ってるからな」
「微妙な所を気に入られても、嬉しくないです」
ぷいっとそっぽを向いて、ナミルは図書コーナーへ行ってしまった。
-----------------------
再びテラスと話せるようになってから、アンセムは毎日幸せを噛み締めていた。
最初はぎごちさが残るテラスだったが、1日経つころには以前と同じように明るい表情を見せ、軽口も叩いてくれるようになった。
やはりテラスと過ごす時間は格別だ。
よくぞ2ヶ月も耐えられたと思う。
しかし、テラスの反応がいつまでも以前と同じでは困るのだ。
友人から特別な存在に昇格しなければ。
カイに頼まれた仕事を2人でしていても、告白を忘れてるのではと思うほどに、テラスはアンセムを男として意識しているそぶりをみせない。
さて、どうするか。
焦るつもりはないが、いつまでもただの友人でいる気もないアンセムは、仕事をしながらもふと考え込んでしまう。
「どうしたの?」
つい作業の手が止まってしまい、テラスに不思議そうに見られてしまった。
「少し休憩しないか?」
せっかくなので提案してみる。
今回の仕事は古い書物の傷んだ部分の修正で、手先と目を使う細かくて疲れる作業だった。
「うん。そうだね」
テラスが笑顔で頷いた。
その笑顔を見るだけで、じ~んと気持ちがあったかくなるアンセム。
「今はこれでいいか」
小さく呟いた。
「何か言った?」
「いや、行こうか」
そして2人は席を立った。
「カイさん、休憩いいですか?」
そう言って、テラスは本をカイに渡した。
アンセムもそれに続く。
「おお、今日はもういいぞ。2人でお茶でもしてきたらどうだ?」
カイは気を利かせた。
「まだ大丈夫ですよ」
カイの意図を読めないテラス。
「2人きりでお茶でもしてきたらどうだ?」
カイにもう一度言われて、ようやく何が言いたいのか理解した。
「そこでいいですよ」
テラスはカウンターの中にある休憩室を指差す。
「まぁまぁ、2人でお茶してこい」
「いいですってば」
ちょっとムキになるテラス。
「お茶してこい」
カイも譲らない。
アンセムは2人の様子を見て苦笑した。
「テラス、行こう」
そして優しくテラスを促す。
「ええ!?だって、カイさん絶対面白がってるだけだし」
「ふふ~ん」
カイはニヤニヤしながら2人を見た。
「オレはテラスと2人きりの方が嬉しいよ」
「だっ…」
アンセムの発言に口をパクパクさせるテラス。
相変わらず涼しい顔で王子様のセリフを口にする。
「行ってこい~」
カイは手をひらひらさせた。
「はい。お先に失礼します」
そう言って、アンセムはテラスの手をとると、出口へ向かって行った。
テラスは納得行かない顔をしつつも、それに従った。