好きを消去する方法
「はっきり名前出すなよなー」

肯定と取れる返事をした光輝は煙草を取り出し火をつける。


「ちょっとベランダで吸えば?」

「いいじゃん別に」

「夢香の前では吸ったことなかったくせに」

「タバコ嫌いの夢香に嫌われたくねーもん」

「あっそ」

光輝は半年前まで夢香と付き合っていたが、交際一ヶ月でフラれている。

フラれた理由は夢香の方が光輝を好きになれなかったから。

「これ一ヶ月縛りの呪いだわ」

「なにそれ。違うと思うけど」

「はいはい。そうですよー、どうせ俺なんて、好きじゃないの。ごめんねって言われた男ですよー」

「あ、夢香にそんなふうに言われたんだ」

「はぁあ。奈々は傷に塩塗り込んでくるタイプだよな」

私が手に持っていた缶チューハイを最後まで呑み干すのを見ながら、光輝がわざとらしく私を睨む。

「気持ちって……なくす時のがムズいよな」

(それは同感)

そう心の中で相槌を打ちながら、私は真逆の言葉を口に吐く。


「私は恋愛とか面倒くて無理」

「あー、フラれたことあるって言ってたっけ?」

(そうだよ。まだ告ってもないけどあんたにね)

「そうだよ。ま……どうでもいいじゃん」

私は缶チューハイのせいで、あやうく口に出しそうになったのをうまくはぐらかす。

──その時、私のスマホが震えた。

ポップアップ通知に目をやれば、相手は夢香だ。


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