好きを消去する方法
どうせ聞いたところで私の欲しい言葉も返事も貰えない。

ラクな関係の代償として、身体は繋がっても互いの心の距離はずっと遠くなってしまった。

──もうただの友達にも戻れない。 


「……あとでいいから俺のLINE消去しといて」

「めんどい」

「じゃあ、俺がやっとく」

「そうして。もう眠い」

「ん、おやすみ奈々」

私は光輝に背を向けてから頬を伝った大粒の涙を拭った。

光輝が寝る前に言う、この「おやすみ奈々」という言葉が私はすごく好きだった。

今夜だけじゃなくて、眠る前のたわいのない挨拶を当たり前にできる関係を心の片隅でずっと望んでいたから。

ベッド横の窓から見える月は涙で滲む。

私は光輝の寝息が聞こえてくると身体の向きを変え、光輝の寝顔を見つめた。


「……好きだったよ。ずっと」

初めてそう言葉にすれば、心はほんの少しだけ軽くなる。

私は枕横に置いていたスマホを手に取ると、光輝の名前を浮かべた。そして光輝の名前を何度も目でなぞってからLINEを消去する。

スマホから消してもこの想いが消去できる訳じゃない。けれどこうやって明日から好きな気持ちを少しずつ消去していきたい。


恋の終わりに向き合って前を向くために。

また誰かをちゃんと好きになれるように。

──今度は好きな人の好きな人になれるように。



2025.3.5 遊野煌
< 7 / 7 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:15

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

返事も溺愛もキスのあとで
遊野煌/著

総文字数/112,403

恋愛(純愛)190ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
舞川雛子(26)は大手お菓子メーカー、三日月製菓コーポレーションの企画戦略室で働いている。 また雛子には2年前から付き合いはじめ、半年前から同棲を始めた、同期で恋人の石垣守(26)がいるのだが、後輩の姫原由羅(24)との浮気が発覚した上、いつのまにか元カノにされていた。 守と由羅から『便利屋雛子』と馬鹿にされ、一人こっそり泣いていた雛子に、企画戦略室の上司である雪瀬鷹哉(29)が『──俺と結婚してくれないか』といきなりプロポーズをしてきた上、同居まで提案してきて──? 鷹哉『宜しくな、俺の雛子』🦅 雛子『俺の……ひぃ、雛子?!!!』🐥 シゴデキで冷徹な上司が見せる素顔は、なぜか想像以上に甘くて……🐥💓🦅 ※表紙も作中使用の画像も全てフリー素材です。 ※執筆期間2026.6.3〜7.20完結です。  ※他サイトさんにて恋愛トレンド1位でした〜良かったら読んで頂けると嬉しいです。
眠れない夜は愛しい雛を抱いて
遊野煌/著

総文字数/5,876

恋愛(純愛)11ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
鷹哉が雛子にプロポーズして一ヶ月ほど経った、ある金曜日の夜のこと。 接待から家に帰った鷹哉は雛子と日本酒で晩酌することになるが──。 鷹哉「……俺は今、どういう状況なんだ?」 雛子「鷹哉さん、好き」 鷹哉「……っ!」 鷹哉がひたすら悶絶することになる、ある夜のお話です🦅🛏️💕 ※ ⚠️こちらの短編は『返事も溺愛もキスのあとで』本編のネタバレを含みます。(完結後のお話です) ※表紙はフリー素材です。
100回目の恋カレー
遊野煌/著

総文字数/8,656

青春・友情17ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
『ねぇ、恋カレーって知ってる?』 ──『ん? 恋カレー?』 『うん。恋カレーを100回たべたら、好きな人が自分のこと好きになっちゃうんだって』 これは好きなアイツに好きだよって言えない、臆病な私の初恋と恋のおまじないの話。 ※表紙はフリー素材です。コンテスト用に既存作を改稿しました。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop