好きを消去する方法
どうせ聞いたところで私の欲しい言葉も返事も貰えない。

ラクな関係の代償として、身体は繋がっても互いの心の距離はずっと遠くなってしまった。

──もうただの友達にも戻れない。 


「……あとでいいから俺のLINE消去しといて」

「めんどい」

「じゃあ、俺がやっとく」

「そうして。もう眠い」

「ん、おやすみ奈々」

私は光輝に背を向けてから頬を伝った大粒の涙を拭った。

光輝が寝る前に言う、この「おやすみ奈々」という言葉が私はすごく好きだった。

今夜だけじゃなくて、眠る前のたわいのない挨拶を当たり前にできる関係を心の片隅でずっと望んでいたから。

ベッド横の窓から見える月は涙で滲む。

私は光輝の寝息が聞こえてくると身体の向きを変え、光輝の寝顔を見つめた。


「……好きだったよ。ずっと」

初めてそう言葉にすれば、心はほんの少しだけ軽くなる。

私は枕横に置いていたスマホを手に取ると、光輝の名前を浮かべた。そして光輝の名前を何度も目でなぞってからLINEを消去する。

スマホから消してもこの想いが消去できる訳じゃない。けれどこうやって明日から好きな気持ちを少しずつ消去していきたい。


恋の終わりに向き合って前を向くために。

また誰かをちゃんと好きになれるように。

──今度は好きな人の好きな人になれるように。



2025.3.5 遊野煌
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