姉たちに虐められてきたけど「能無しのフリ」はもう終わり。捨てられ先では野獣皇帝の寵愛が待っていて!?
 胸がドクンと音を立て、全身の体温が上がる。
「……ジンガルド」
「政略結婚が決まった時は、同意したからには男女の愛が育たなくとも妻となる女性を尊重し、誠意を尽くす覚悟だった。だがひとたび君を妻として迎え、君と夫婦になる未来を思い描いてしまったから……もう君以外の女は無理だ。俺には、君でないとダメなんだ」
 なんて誠実でひたむきな人なんだろう。そして彼は、その心の内に燃え立つような激しさも秘めている。
 声を出すのも忘れてその瞳を見つめていると、ジンガルドはコホンと咳払いして私から視線を外す。
「とにかく、教師の件は分かった。目ぼしい者を近日中に手配しよう」
「あ、ありがとう。お願いね」
 垣間見た激情にそわそわと落ち着かない思いで、差し出されたジンガルドの腕に手をかける。彼のエスコートでゆっくりと庭を歩きだした。
「ああ、そうだ。今度離宮を出る時は門からにしてくれ」
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